「ねー、そんな顔してるの、ゴリくんらしくないよ」
「だってさー、まさか、ウチの部員が酒とか飲んでるとは思わないでしょー」
A棟とB棟の間の渡り廊下に座って、ゴリくんを慰めている。
「そんなの、あいつらがそういう奴だったってだけで、ゴリくんは関係ないでしょ」
「気づけなかったのは、俺の監督不足でもあるわけじゃんー」
「俺は、関係ないと思うけどなー。
それこそ、SNSとかで連携しちゃったら監視のしようもないじゃん」
「ヒロキくんって、そーいうとこ、わりとドライだよね」
「ゴリくんがウェットなだけ、あんなん気にしなくていいんだよ」
年明けに発覚した、宮高の飲酒喫煙問題。
近所のカラオケ店でバイトをしていた宮高OBが、宮高生に酒をサービスしていた。
たまたま夜のシフトでやってきた店長が、
店先に宮高のシールが貼ってある自転車がいくつも止まっていることを不審に思い、
OBに問い詰めた所、酒やタバコを提供していたことが発覚。
OBは即日クビ、カラオケルームの映像は宮高や警察に提出されることとなった。
ってことは、新聞沙汰になってしまった。
N体大の事件もあったため、麻薬や覚醒剤の使用も疑われたけれど、
さすがにそこまでは無かったみたい。
結局、柔道部を含む5つの運動部が活動停止。
50名以上が停学処分。結局、ほとんどの子が自主退学した。
「だからね、そんな顔しないで、ね」
ゴリくんの頭をなでなでしあげる。
「みんな見てるよー。恥ずかしいじゃーん」
「ゴリくんがいつも俺にしてくれてることじゃーん」
「ヒロキくん、ありがとー」
「くっついてると、またメグに怒られちゃうかもしんないね。
あとで、ちゃんと説明しておくね。
だから、今は思いっきり俺に甘えていいんだよ」
「ありがとー、ヒロキくん」
「錦織、筒井。こんなクソ寒い所で、仲睦まじいことだな」
「シノ」「シオンくん」
「何だよ、また文句言いにきたのかよ?」
「(無視)
錦織、例の件、まだ引きずっているのか?」
「そりゃ、ひきずるでしょー。もう、俺、来年の夏の大会にも出れないんだしさー」
「でも、先生たちの計らいのおかげで、
強豪校との練習に参加させてもらえるようになったんだから、
逆に良かったかもしんないじゃん」
「フン、お前がいつも県大会止まりだったのは、メンタルが弱いせいだ。気持ちを切り替えろ。
落ち込むなんて、時間の無駄だ」
「シオンくんは、厳しいなー。なんでヒロキくんみたいに優しく言ってくれないのかなー?」
「シノに優しい言葉なんて期待しちゃだめ。いつも、バカバカ言うんだから」
「シオンくん、そんなこと無いよねー?」
「知るか。バカの相手は時間の無駄だ。
こんな所にいると風邪ひくぞ。さっさと教室に戻って、せいぜいイチャついていろ」
「バカは風邪引かないんでーす」
「知るか、バカ」
「ねー、シオンくん、なんか怒ってなかった?」
「知らねーよ。あいつはいつも、あーいう嫌な奴なの」
「そんなこと無いと思うけどなー?」
「でもさー、俺さぁー、ヒロキくんが女の子だったら良かったのにって、時々思うんだよねー。
もっとちゃんと、守ってあげられると思うし、、、」
「はぁ?お前、そんな適当な気持ちでメグと付き合ってんのかよ?
俺だってさぁ、付いてるもんは付いてんだぞ。握ってみろよ」
「ゴメンゴメン、そういう意味じゃなくてさー。
ヒロキくん、すぐにケンカするから、危なっかしくてさー。
早くいい人見つけて、落ち着いてくれないと、俺、安心できないよー」
「とにかくさー、俺、子供の頃から小さくて、女の子みたいってよく言われたからさー、
そういうの、なんか、嫌なんだよね」
「そうかー、ごめんねー。気づいてあげられなくて」
「いいよ。ゴリくんが、悪気があって言ったんじゃ無いって判るから」
「ヒロキくん、有難うー。
あっ、またヒロキくんのこと、なでなでしちゃった。。。
俺も後でメグに謝らなきゃだねー」