君が微笑んでくれるから Ep00日常の風景-1

君が微笑んでくれるから

「ねー、そんな顔してるの、ゴリくんらしくないよ」
「だってさー、まさか、ウチの部員が酒とか飲んでるとは思わないでしょー」
A棟とB棟の間の渡り廊下に座って、ゴリくんを慰めている。

「そんなの、あいつらがそういう奴だったってだけで、ゴリくんは関係ないでしょ」
「気づけなかったのは、俺の監督不足でもあるわけじゃんー」
「俺は、関係ないと思うけどなー。
それこそ、SNSとかで連携しちゃったら監視のしようもないじゃん」
「ヒロキくんって、そーいうとこ、わりとドライだよね」
「ゴリくんがウェットなだけ、あんなん気にしなくていいんだよ」

年明けに発覚した、宮高の飲酒喫煙問題。
近所のカラオケ店でバイトをしていた宮高OBが、宮高生に酒をサービスしていた。
たまたま夜のシフトでやってきた店長が、
店先に宮高のシールが貼ってある自転車がいくつも止まっていることを不審に思い、
OBに問い詰めた所、酒やタバコを提供していたことが発覚。
OBは即日クビ、カラオケルームの映像は宮高や警察に提出されることとなった。
ってことは、新聞沙汰になってしまった。

N体大の事件もあったため、麻薬や覚醒剤の使用も疑われたけれど、
さすがにそこまでは無かったみたい。
結局、柔道部を含む5つの運動部が活動停止。
50名以上が停学処分。結局、ほとんどの子が自主退学した。

「だからね、そんな顔しないで、ね」
ゴリくんの頭をなでなでしあげる。
「みんな見てるよー。恥ずかしいじゃーん」
「ゴリくんがいつも俺にしてくれてることじゃーん」
「ヒロキくん、ありがとー」
「くっついてると、またメグに怒られちゃうかもしんないね。
あとで、ちゃんと説明しておくね。
だから、今は思いっきり俺に甘えていいんだよ」
「ありがとー、ヒロキくん」

「錦織、筒井。こんなクソ寒い所で、仲睦まじいことだな」
「シノ」「シオンくん」
「何だよ、また文句言いにきたのかよ?」
「(無視)
錦織、例の件、まだ引きずっているのか?」
「そりゃ、ひきずるでしょー。もう、俺、来年の夏の大会にも出れないんだしさー」
「でも、先生たちの計らいのおかげで、
強豪校との練習に参加させてもらえるようになったんだから、
逆に良かったかもしんないじゃん」

「フン、お前がいつも県大会止まりだったのは、メンタルが弱いせいだ。気持ちを切り替えろ。
落ち込むなんて、時間の無駄だ」
「シオンくんは、厳しいなー。なんでヒロキくんみたいに優しく言ってくれないのかなー?」
「シノに優しい言葉なんて期待しちゃだめ。いつも、バカバカ言うんだから」
「シオンくん、そんなこと無いよねー?」
「知るか。バカの相手は時間の無駄だ。
こんな所にいると風邪ひくぞ。さっさと教室に戻って、せいぜいイチャついていろ」
「バカは風邪引かないんでーす」
「知るか、バカ」

「ねー、シオンくん、なんか怒ってなかった?」
「知らねーよ。あいつはいつも、あーいう嫌な奴なの」
「そんなこと無いと思うけどなー?」

「でもさー、俺さぁー、ヒロキくんが女の子だったら良かったのにって、時々思うんだよねー。
もっとちゃんと、守ってあげられると思うし、、、」
「はぁ?お前、そんな適当な気持ちでメグと付き合ってんのかよ?
俺だってさぁ、付いてるもんは付いてんだぞ。握ってみろよ」
「ゴメンゴメン、そういう意味じゃなくてさー。
ヒロキくん、すぐにケンカするから、危なっかしくてさー。
早くいい人見つけて、落ち着いてくれないと、俺、安心できないよー」

「とにかくさー、俺、子供の頃から小さくて、女の子みたいってよく言われたからさー、
そういうの、なんか、嫌なんだよね」
「そうかー、ごめんねー。気づいてあげられなくて」
「いいよ。ゴリくんが、悪気があって言ったんじゃ無いって判るから」
「ヒロキくん、有難うー。
あっ、またヒロキくんのこと、なでなでしちゃった。。。
俺も後でメグに謝らなきゃだねー」

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