君が微笑んでくれるから Ep06祀火-3

君が微笑んでくれるから

A棟B棟の渡り廊下
「俺は別に良いけどさー。こんなの、ぶっつけ本番で大丈夫なのー?」
「あぁ、大丈夫だ」
錦織が、頭をかいた。

「そういえばさー、シノくん、柔道の授業の時に、手を抜いていたよねー」
「バレていたか。さすがは、錦織だな」
「そりゃー、組み合えば判るよー
俺、ああいうことされて、ショックだったんだよねー」
「すまんな。だから本番は、本気で来い。
ただし、合気道部の宣伝もしたいから、異種格闘技戦になるがな」
「シノくんが本気出してくれるんなら、なんでもいいよー」

「でもさー、合気道の先生が相手をポイポイ投げているの、
観たことあるけど、あれって本当なの?」
「バカか?失礼な事を言うな!ここでは危ないから、軽く見せてやる」

「えー、シオンくん、すげーじゃーん。ちょっと体が浮いた気がした」
「くっつくな、髪に触るな!全く、誰に似たんだ」
「もう一回やってよー」
「バカ、渡り廊下だと危ない」
「ちょっとくらい良いーじゃーん」

「松尾と筒井が付き合っているのは、知っているよな?」
「うん、ハルマくんから聞いた」
「良かったな。厄介払いが出来て」
「厄介・・・そうなのかなー。
俺の中でも何でか良くわかんないけど、
恋人を奪われちゃったような感じが、ちょっとあるんだよねー」
「バカか、お前には青山が居るだろう。
あんなバカより、青山に、精一杯、尽くしてやれ」
「それはそうなんだけどねー。
シオンくんは、ジュンコちゃんと、どうなの?」
「知るか。俺の勝手だろう」
「えー、そういうの、ズルいよー」

フォーメーション練習は案外すんなり終わり、まだ吹奏楽部が残っているみたいだから、
顔を出しに行こうかと。
「ヨリくん、ごめん。ちょっと顔出してくる。先帰ってて」
「はいはい、判った。終わったらLINEしてね」
「へーい」

基本、スライムなんだから、あんま無理しないでほしいのにな。
駐輪場に行くと、シノくんが居た。
「おう、松尾か。F4も一緒か。あのバカはどうした?」
「音楽室に行くって言ってたよ」
「そうか、、、そのだな、、、すまんが松尾と2人で話したいことがある。
F4は先に帰ってくれるか?」
「はいっ」
「少し歩くが、稲荷の前で話そう」

宮高の敷地内には、小さな稲荷神社がある。
幽霊が出たとか、火の玉を見たとかいう話もあるけれど。
側に教員用の駐車場があるくらいで、稲荷以外、特に何もない場所。
なので、滅多に来る人は居ない。
でも、夜になると幾つもの灯篭にLEDの灯りが灯るし、
お稲荷さんが奉納されたりしていて、
地元の人には大切にされている場所なのかな?

「すまんな、こんな所に呼び出して」
「なんとなく、察しはついてるけどね」
「そのだな、筒井とはうまくやれているのか?」
「それは、学祭のほう?恋愛のほう?」
「どっちもだ」

「どっちも、うまくやってるよ」
「そうか、、、あのバカとうまくやれているのか、、、」
「バカバカ言わないでよ。大人しくしてる時は、可愛いんだから」
「大人しくないのが問題なんだろう。
お前もとうとう、三木や錦織の仲間入りか、、、
しかし、この時期になって、何故付き合うことにした?」
「それは、君が一番判ってるでしょ?」
「?」
「俺はシノくんが引いてくれたから、告白することにした」
「俺が?どういう意味だ?」
「だって、シノくん、ヒロの事、好きだったよね?」

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