君が微笑んでくれるから Ep06祀火-1

君が微笑んでくれるから

2-8
「ショウが俺を呼び出すなんて珍しいね」
「えぇ、実は俺、ダンス部の部長になりまして」
「へー、すげーじゃーん」
「それで、学祭の中庭イベントを仕切ってくれって言われてるんですが」

「そんなの、マイカとかライトと相談すれば良いじゃん」
「マイカはプライド高いし、ライトは文句は言うけど自分で何かするタイプではないっス。」
「あー、そんな感じするねー」
「それにうちらダンス部は、長いショウをやったことが無いんスよ。
吹奏楽部は、どんな感じで、コンンサートのプログラムを作っていますか?」
いつになく、真剣なショウ。ふざけてないと、格好いいんだな、ショウ。
俺もちゃんと答えてあげないと。

「そうねー、うちらは、
一部二部三部でだいたい色が決まっているから、参考になるかはわからないけど、
外でやるんだから、一発目は誰でも知っている曲が良いと思う。USAとか」
「USAっスかー?」
「2曲目は、全然マニアックなやつの方が良いと思う。
カポエラとか、ブレイキンの子、居なかったっけ?」
「カポエラは居ないっス。ブレイキンも、アスファルトだとちょっと難しいですね」

「あと、やっぱ、全員ダンスみたいのがあった方が、楽しいよね。
観てる方としても、お気に入りの人が見つけられるから。
ショウも、またモテちゃうねー」
「そうっすか?ヒロ先輩、有難うございます。参考になったっス」

第二視聴覚室準備室 SNS研究会
「ねーミズキ、だから、もう1つ映像を作って欲しくてさぁ」
「ま、全くだね、君たちは、す、好き勝手に依頼してくるけど、
こ、こちらにも、都合ってものがあるんだよ」
「焦らなくて良いから。ミズキのペースで喋っていいんだよ」
斉藤ミズキ。どもる障害があって、オタクっぽく見えるけれど、
この学園でミズキをからかう奴は、もう1人も居ない。
ミズキが作る動画がとにかくバズりやすいからだ。
「新聞部の動画の編集しているばっかじゃ、つまんないだろ?」
「ダンス部の、へん、編集もしてるわ」
「とにかく、俺たちがススキとかの間を歩いてたりする動画を、
いい感じに編集して欲しいの」
「いい感じって、き、君ねぇ。そういうの、
一番、嫌われる依頼だぞ。もっと具体的に言え」
「えー、じゃぁ、絵コンテとか描けばいいの?」
「そんなのは要らない。場所とか、と、登場人物とか、だ」
「場所はー、青松川でいいや。出てくるのは俺とヨリくん」
「ヨリ?」
「3-1の松尾タダヨリくん。あの背の高い人」
「お前と、そ、その、松尾との関係が、よく分からん」
あー、これは、食いついてきてるかもー。
「とにかくさー、明日か明後日、そっちで練習するから、見てよ。
衣装も着てやるからさー」

「斉藤ー、素材集めてきたぞ」
「ヨリくん?」
「え?ヒロ?」
「な、なんだ、松尾。タイミングの悪い男だ。筒井の依頼を体よく断ろうとしていたのに」
「お前が集めてこいって言うから、持ってきたんだぞ。
どうやらマネージャーのサクラちゃんが、峯岸に気があるっぽくて、
練習中の動画が山ほど出てきた」
「そ、そうか。ハル、マキ!練習中の動画で使えそうな所をピックアップしといてくれ」
「はいっ」

「ねー、ミズキー。俺のお願いはー?」
「あー、やるやる。やるから、くっついてくんな」

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