君が微笑んでくれるから Ep05雨宿り-9

君が微笑んでくれるから

柔道場。ダンス部のミーティング
「えー、MT始めますがー、全員揃っていないのがウチららしいな」
「ツーとゼンは校内に居るっぽいから、呼ぶー?」
「いや、あいつらには大事なミッションがあるから、呼ばなくて良い」
「大事なミッション?」
「エミリー、何となく判ってんだろ?」

ダンス部のミーティングなんて、年に1度2度あるかないか。
ましてや男子女子が集うなんて初めてかもしれない。
別にライバル視してるわけじゃないし、時々、教え合ったりもしてるし、混成チームもあるけど。
「今日、ここに皆んなを呼んだのは、ダンス部の次期部長を決めるためだ。
他の部は知らんが、とりあえずダンス部は学祭をもって、俺たち3年生は引退しようと思う」

「俺の独断を言わせてもらうと、次期部長は、ショウが良いと思っている」
えっ、俺っスか?
「エミリはどう思う?」
「そうね。比較的別行動しがちなブレイキン、ダブルダッチ隊より、中心に居るし、
オールラウンダー?って言ったらちょっと褒めすぎか。器用だし、皆んなを引っ張る力もあると思う。
それに、F4だしね。ヒロミじゃ作れない、新しいダンス部になっていくと思う」
「えー、皆さんはどう思いますか?」

「賛成ー」30数名の拍手があがった。
「じゃー、ショウ、立て!お前が次期部長だ」
「はい」
何していいか訳わかんなくて、とりあえず、ヘコヘコとお辞儀した。

「じゃー、ショウのサポート役となる副部長だが、、、ショウと仲の良いライトが適任かな?」
「あのー、ヒロミ先輩、何言ってるんですか?俺、別にショウタロウと仲良くはないって話」
「そうかー?ライトが一番心を開いているように見えるけどなぁー」
「心はいつも開いていますよ。
それに、俺は思ったこと、いつも何でも言ってますけど」

あーーーーー、こいつ、陰キャか陽キャの違いだけで、ヒロ先輩とどっか似てるんだよなぁ。
「あー、怒りましたね?ヒロミ先輩、腕の毛が猫みたいに立ってますよ」
「怒ってなんかねーよ。とにかく、名前で呼ぶな」
「それなら良かった。平和が一番ですもんね、ロミヒー先輩」
バカか、こいつ。煽るな煽るな。

「お前なぁっ!」
カッとなって飛びかかろうとするヒロミ先輩を、エミリ先輩が静止する。
「もうっ、こんな小さい子に、あんたみたいな図体のでかいのが手を上げて、恥ずかしく無いの?」
ざわざわとする場内で、俺は手を挙げた。
「はいっ、はいっ、はーい。それでは、次期部長として、副部長を指名しても良いでしょうか?」

おう、それなら、という感じで、道場内のどよめきは収まった。
「えー、俺がサポートして欲しい副部長はー、メイメイです」
さっきとはまた違った種類のどよめきが。
なにしろ一番驚いているのは、メイメイ本人だ。
「私、、、ですか、、?マイカちゃんじゃなくて?」
「あぁ、メイメイだ」

「えー、俺がメイメイを指名した理由を説明します。
スキルで言えば、マイカの方がまだずっと上です。
ただ、マイカは器用で何でもできるので、私が私が、となりがち。
これは、俺と衝突する部分があるかなと思いました」

「一方、メイメイは、エミリ先輩やマイカの高い壁に、今も苦しんでいると思います。
でも、どうしたら良いんだろう?とか、皆んなとどうやったら揃えられるんだろう?
出来ないからこそ出来る力は、後輩たちの道標になるはずです」

「もちろん、マイカと、生意気な天才くんの意見、みんなの意見も聞きますが、
俺とメイメイを主軸に活動するってのは、どうっスか?」
最初はパラパラとした拍手が、次第に柔道場に響き渡った。
「ありがとうございます。頑張ります」
「メイメイ、泣くな!」

「えー、それじゃあ、部長はショウ、副部長はメイメイで決定だな」
「なんか、一仕事終えた感じで、寂しくなっちゃうねー」
「ショウは今後ダンス部で、どういうことをしてみたい?」
「え?俺がっスか?」

「えーー。そうっスね、俺はですね、テレビで群青のダンスやってたじゃないっスか。
あぁいうアツい男子女子混合でのアオハルーって感じの集団映像を作ってみたいっスね」
「アオハルかー」
「ヒロミー、この子、いきなり新しい風吹き込んでくれそうじゃん」

「えー、部長として、最後の指示となるがー、
ショウは女子ダンス部に手を出さないこと。雰囲気が悪くなるからな」
「先輩ー、そんなこと、しないっスってー」
「はぁーっ(溜め息)ショウタロウは、それをするから、釘刺されてるって話」

「まぁ、冗談はさておき、ショウに最初にやって欲しいことがある」
「はい、何っスか?」
「学祭の中庭イベント60分、お前が仕切れ」
「俺がっスか?」

なんだかんだで部長になった。俺が部長かー。先輩達の壁、高いなー。
「おいー、ライトー、歩きスマホは危険だぞ」
「そんなの、ショウタロウに言われたくないって話。俺、全部見えてるんで」
「見えてるってなぁ、油断は禁物だぞ。宮城先生なんて、ここで足捻ったらしいぞ」
こいつ、ぜんぜん携帯から目をはなさない。本当に大丈夫なのかよ。
「あー、そういえば、部長就任、おめでとうございます。
さっきのスピーチ、ショウタロウにしては良かったですよ」
「全くなぁ、お前、あぁいう時にヒロミ先輩にケンカを売るなよな」
「はぁー、ケンカなんか売ってないって話。ただ、面倒くさかっただけです」

「面倒くさいってなー、お前、いくらなんでもなぁ、、、」
って、確かに、こいつがヒロミ先輩を挑発したことによって、俺への信頼度は格段に上がった。
無難にマイカを推薦したかったけど、メイメイを推薦できたのも。
まさか、こいつがそこまで考えていた?まさか、ねぇ?

「ようー!ライトー、久しぶり。たまには筋トレしに来てみるもんだなw」
やってきたのは野球部の宮田先輩だ。ライトとどういう関係なの??
「武川と、南田の関係、当たっていただろ?」
「そうですね、普段は隠していますが、武川先輩は嬉しい時に両方の眉がゆっくり上がります。
南田先輩は武川先輩とすれ違った時に、匂いをスゥーッと嗅ぐような独特な仕草をしています。
さすがは宮田先輩です。よく気が付きましたね」

「生徒会長の小川については?」
「そうですねー、携帯いじっている時が一番分かりやすいんですが、特に変化は無いです」
「やっぱ、あいつは無いかー」
???
「ちょちょちょちょ!先輩、さっきから何の話してるんですか?」
「何の話ってねぇ、君ぃ、子供じゃないんだから判るでしょwLOVE、ラブの話だよw」
「年齢は関係ないですよ。単なる答え合わせみたいなものです」
「シノとジュンコちゃんはどうなんだ?あれはいきなりすぎて、俺も驚いたぞ」
「篠宮先輩は、普段から気配を消すのが上手くて、俺もあまり見えませんでした。
俺が見ているのも、気づいていると思います。すぐ気配を隠すので。
以前は、何人か口角がゆるむ人がいましたが、今はジュンコ先輩だけですね」
「そっかー、つまんねーなー」
「あぁ、3−4の松山先輩ですが、、」
「あれは夏休み前に、青木に振られたばっかだよな、、、」
いつの間にか、何でも喋っちゃうメガネと、ポンコツロボットの最凶コンビが出来上がっていた。
「じゃぁ、3-6の斉藤とよりを戻したとか?」
「さすがは宮田先輩ですね。ビンゴですよ」
あーーー、俺、もう、知らね。

第二視聴覚室。
「ごめん、いつも遅れちゃって」
「はぁーー(溜息)、時間は守れって話」
「携帯ばっかいじってないで、練習してろってー話。
あー、この靴、どっから持ってきたの?」
「はい、ウチが貸衣装屋をやっていまして、白い革靴を何個か持ってきたっス」
「ショウー、すげーじゃーん。ちょっと衣装と合わせてみてよ」

「着替えましたよ。どうっスか?」
「すげー、F4、すげーかっこいいー。写真撮ろーー」
「うん、やっぱ、4人揃うと、壮観だね」
「そうだ、胸に薔薇刺そ。お気に入りの姫君に、薔薇を渡すみたいな」
「バチェラーですか、、、」

「バチェラーって何?」
「Amazonでやってた、激アツ恋愛バラエティっスよ」
「カッコよくてお金も持っている独身男性が、何人もの女性の中から、
好みの女性を選んで、ローズを受け取った女性が次回も参加できるっていう話」
「だんだん、女性の数が減っていくところが、ヤバいんですよ」

「へー、結構、エグい番組だね。
じゃ、ローズ、3本くらい刺してみる?」
「誰も貰ってくれなかったら、カッコ悪いじゃないっスか?」
「F4なら、秒で無くなるでしょ」
「先輩達もローズ刺してくれるなら、問題ないですよ」

「でねー、一応、赤線引いたとこは俺が歌って、青線はヨリくんのハモリってことで」
「はい」
「あとさー、なんか、みんな緊張してない?」
「そんなこと無いっスよ」
「じゃ、一回軽く、通すよ」

「あー、やっぱコンテンポラリー3人だと、ちょっと散らかっちゃうかな。
ラップんとこのフリ、一回、ツーだけでやってみて?」
「そう。これくらいの方が見やすいな」

「じゃあ、俺が歌い始めたら、F3はゆっくり入ってきて、
Aメロの後半はツーのソロパート、ショウとライトはかっこいい感じで左側に座っていて」
「はい」
「Bメロは、ショウとライトがさっきのフリやってみて」

「ツー、もっと荒っぽいフリして。ケンカしてるみたいなやつ」
「CRUMPですか?真似事はできますが、次までに研究してきます」
「ショウとライトんとこは、女の子がやるHIP HOPみたいな感じにしてみて。対比させたい」
「あんたねぇ、思いついた事をペラペラ喋るなって話」
「そうかなー?ライトなら絶対、俺が思ったより良くやってくれると思うけど、、、
あ、そうだ、ミズキに雨の映像作ってもらおう。
ヨリくん、その辺にある置きっぱなしの傘、3本拾ってきて?傘使おう」

F4練習が終わって、ヒロとは別々に下校。まぁまぁ面倒くさい。
「ツーくん、ソロん所、格好良かったよ」
「ゼンの顎を掴んで持ち上げろって言われた時、ヤバかったです」
「あの人、空気読めないからねー。ごめんね」

「それに、今日のヒロ先輩、ちょっと怖かったです」
「あの人、スイッチ入っちゃうと、止めらんないからねー」
「ヤバいですよね、、、」

「でも、全体としては、すごくブラッシュアップできたと思います」
「そうなの?俺、ダンスのこととか、あんまりよくわかんないけど」
「やっぱり、ヒロ先輩って、すごい人だと思います」

「ヒロが?あの人、結構な暴れん坊だよ。俺、毎日、冷や冷やさせられてるんだから」
「でも、ヨリ先輩と、ヒロ先輩の関係。すごい羨ましいです」
「そうかなー。あの人と付き合うの、結構大変だよ?
デートしている時でも何か思いつくと、わけわかんない数式書いてブツブツ言ってるし。
今、デート中でしょって言うと、うるさいって怒るし。
そうかと思うと、最近冷たいとか文句言うし。熱帯魚飼うより難しいよ」
「数学の頭の良い人は、そういうところあるみたいですよ」
「ガウスだか、オッペンハイマーだか知らないけどさー、俺の負担、多く無い?」
「ハハハ、愚痴なら、いつでも聞きますよ」

「でもさー、好きって、どういう気持ちなんだろうね」
「それはもう、哲学ですね。一緒に居たいと思う気持ちでしょうか?
離れたくないとか、他の人に触って欲しくないとか?
ヨリ先輩は、ヒロ先輩と一緒にいる時、嬉しいですか?」

「一緒にいると嬉しいし、落ち着くけど、イラっとすることも、結構、っていうか、かなりあるよ。
離れてる時も、何やらかしてるか心配になるから、ずっと側にいて欲しいし。
それでも、好きの方が大きいのかなー」
「それは良いですねー。ラブラブですね」
「そうだね、ラブラブなのかもねー」

「で、結局、まだ告れてないんだね」
「はい」
「モタモタしていると、俺が教えちゃうよ?」
「それはダメです。俺が直接、言います」

「ヨリ先輩は、どうやって告白したんですか?」
「一緒に花火見て、それなりにムード作ってみた」
「ムードですか」
「でも、あの人、超鈍感だからねー。けっこう、強引だったと思う」

小虎の独り言:
Ep.5はここで終わりです。
ゼンくんとツーくんは、Back Storyで書いている、台湾の人です。
ショウとライトは、仮面ライダーWから名前をいただきました。

左宮寺ショウタロウ(ショウ) 2年生
F4の中では、リーダー的な役割。次期ダンス部部長。
背が高いグループとして、ヨリくん、ゼン、ショウで一括りになります。
突然、恋に落ちることがあり、大抵いきなりすぎて沈没しています。
左宮寺家も、この街では、あぁあのお宅ねぇとすぐ特定されるような名家です。
得意なスタイルはHipHop全般とNewJackSwing

ゼンゼン:林宜增/增增/roger 2年生
元キャラは台湾でモデルをやっているみたいです。
結構な頻度でCMや大きなポスターを貼っているので、台湾では有名な人なのかもしれません。
背が高いので增增(ゼンゼン)と呼ばれています。
https://www.facebook.com/profile.php?id=100058101758536
作中では、穏やかで几帳面な性格。何故だかいきなりヒロに懐いています。
得意なスタイルはJazzDance、Contemporary

ツーツー:胡峻豪/刺刺/Tsz 2年生
元キャラは台湾でダンスの先生をしていたみたいですが、2023年に曲をリリースして歌手活動を開始しています。
本当はツィーツィーって感じに発音するのですが、面倒なので、ツーと表記しています。
インスタは、上半身露出が多いので、閲覧注意ですw
https://www.instagram.com/junhaohu/?hl=zh-tw&fbclid=IwAR131Lyrw0mMYy73mCfBrJcdG9WOpePZ3WkXDgRRH5VuAgkODtXCYNkJxvU
日本のアニメやマンガが大好き。いつもニコニコスマイルで仲間が寄ってきます。
ゼンも好きだけど、ヨリくんも大好き。
得意なスタイルはLockin’

二人を知ったのは、偶然見た「我是誰 Who Am I」のMVからです。
とても素敵なストーリーなので、お時間がありましたら是非ご覧ください。日本語字幕もあります。
https://www.youtube.com/watch?v=diyhrrpqYPU

間宮ライト(ライト) 1年生
ヒロは2年生と思っていますが、F4では唯一の1年生。
理数系の特待生でもあり、いわゆる天才肌です。
小さいグループとして、ヒロ、ツー、ライトで一括りになります。
割と引っ込み思案な子で、いつも携帯をいじっています。
小さいグループは、ヒロの性格もあってか、あんまり仲良く無いみたい。
まだダンスを始めたばかりなので、特に得意なスタイルはありません。

F4はモブキャラで済まそうと思っていたのですが、顔が付くと、色々考えてしまうものですね。
お陰で、最初に考えていたのと違う展開になりました。

メイメイとマイカ 2年生
合宿中にヒロとヨリくんがダンスの基礎を教わる話があったのですが、
ダンスの話を書くと長くなっちゃうんでごっそりカットしました。
よきライバルであり、友人でもある2人です。
メイメイはJazz、マイカはHOUSEが得意です。

福山雅治 – Squall
https://www.youtube.com/watch?v=rZSQbQtrLds
女性目線のセツナソング。
結果、ヒロは、カラオケで歌ったら女子にフルボッコされるような、
無神経なこと平気でしちゃうよーってことが強調できたかなと自画自賛。

そんなかんじでEp6をお楽しみに!

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