君が微笑んでくれるから Ep05雨宿り-8

君が微笑んでくれるから

夏休みの終盤から、土曜日は、ヒロと振りやハーモニーの確認と、数学を教えてもらうということで、
夕方からは、ずっと一緒にいれる。
2学期が始まってからも、土曜日はうちでヒロと一緒にいる。
シノくんにバレなきゃいいけど、、、。

「いやー、なんでも筒井先生は、数学オリンピックで金メダルを取ったそうで。
そんな先生に教えて頂けるなんて、タダヨリには贅沢すぎますよ」
「いえー、大した事ないですよ。でも、妹さんも受験生と聞いています。
なんだったら、妹さんの勉強も見ますよ。教えられるのは理数系だけですが」
「いやー、ウチのはどうにも理数が弱くて。逆に助かりますよ」
ヒロにヘコヘコする親父に何となくイラっとする。先生って呼ぶなよ。
それに、ヒロっておじさんに取り入るの上手いんだな。イラっ。

結局、ヒロにもやることがあるだろうと、
ほとんど使っていないゲストルームがヒロが使っていい部屋ということになった。
ヒロが居ると、部屋がすぐに散らかるから、それはそれで良かったけど。
「いやー、先生。遅くなることもあるでしょうから、寝具やバスタオルも用意しておきましたよ」
「あ、ありがとうございます」
もー、そう言うこと言うと、平気で寝泊まりするぞ、、、
案の定、音楽室から使っていないキーボードを借りてきて、気が向くと練習している。

ヨリくん家。
前に来た時は、緊張してて気が付かなかったけど、
ドアには出入り自由な穴が空いているし、
壁の上の方はキャットウォークになっていて、隣の部屋の様子がなんとなくわかるようになっている。
ご両親が建築家だそうで、猫ファーストの家にリフォームしたそうだ。
ヨリくんの部屋でマンガを読みながらゴロゴロしていると、
武蔵が乗っかってきた。
「もー、武蔵、重い。また太った?」
「変わってない」
「武蔵、キャットウォーク全然使わないね。登れないのかな?」
「今、考えているから、話しかけないで」
「へーい。じゃあ、あっちで武蔵と遊んでる。できたら呼んでね」

マンガの続きを読みながら、武蔵の重みを感じていると、
キャットウォークから小さな声が聞こえた。
見上げると、小さな三毛猫。顔はなんとなく武蔵に似ている。

こっちおいでーおいでーと、テレパシーを送ると、
まばらに並んだ壁の棚を一段二段と降りてきて、とうとう俺の横にちょこんと座った。
「三毛ちゃん、可愛いねぇ。武蔵の妹なの?」
三毛ちゃんを撫でていると、俺も撫でろとばかりに武蔵が寄ってくる。
三毛ちゃんは猫パンチで武蔵を追い払った。
、、案外、気が強い子なのかな。。。
三毛ちゃんをなでなでしていると、ヨリくんがドアをノックした。
「ヒロ先生ー、まだ起きてる?一応出来たから見てー」
「うん、学術誌に出す論文書いてた」
「あれ、巴。もうヒロと仲良くなったの?」
「そりゃ、猫は人を見るからねー」
「そうかなー?」
「巴ちゃんっていうのかー、小さくて可愛いねー。
もう鼻で何回もチューされちゃったよ。
ヨリくんは、チューしてくれないの?」
「はい、チュー」
「雑ー。やり直しー。
ねー。たまには腕枕して欲しいなー」
「サエ(妹)が質問しに来るかもしれないでしょ?」
「えー、前はいつもしてくれたのにー」「はいはい、じゃー、明日、ちょっとデートしましょうねー」

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