夏休みの終盤から、土曜日は、ヒロと振りやハーモニーの確認と、数学を教えてもらうということで、
夕方からは、ずっと一緒にいれる。
2学期が始まってからも、土曜日はうちでヒロと一緒にいる。
シノくんにバレなきゃいいけど、、、。
「いやー、なんでも筒井先生は、数学オリンピックで金メダルを取ったそうで。
そんな先生に教えて頂けるなんて、タダヨリには贅沢すぎますよ」
「いえー、大した事ないですよ。でも、妹さんも受験生と聞いています。
なんだったら、妹さんの勉強も見ますよ。教えられるのは理数系だけですが」
「いやー、ウチのはどうにも理数が弱くて。逆に助かりますよ」
ヒロにヘコヘコする親父に何となくイラっとする。先生って呼ぶなよ。
それに、ヒロっておじさんに取り入るの上手いんだな。イラっ。
結局、ヒロにもやることがあるだろうと、
ほとんど使っていないゲストルームがヒロが使っていい部屋ということになった。
ヒロが居ると、部屋がすぐに散らかるから、それはそれで良かったけど。
「いやー、先生。遅くなることもあるでしょうから、寝具やバスタオルも用意しておきましたよ」
「あ、ありがとうございます」
もー、そう言うこと言うと、平気で寝泊まりするぞ、、、
案の定、音楽室から使っていないキーボードを借りてきて、気が向くと練習している。
ヨリくん家。
前に来た時は、緊張してて気が付かなかったけど、
ドアには出入り自由な穴が空いているし、
壁の上の方はキャットウォークになっていて、隣の部屋の様子がなんとなくわかるようになっている。
ご両親が建築家だそうで、猫ファーストの家にリフォームしたそうだ。
ヨリくんの部屋でマンガを読みながらゴロゴロしていると、
武蔵が乗っかってきた。
「もー、武蔵、重い。また太った?」
「変わってない」
「武蔵、キャットウォーク全然使わないね。登れないのかな?」
「今、考えているから、話しかけないで」
「へーい。じゃあ、あっちで武蔵と遊んでる。できたら呼んでね」
マンガの続きを読みながら、武蔵の重みを感じていると、
キャットウォークから小さな声が聞こえた。
見上げると、小さな三毛猫。顔はなんとなく武蔵に似ている。
こっちおいでーおいでーと、テレパシーを送ると、
まばらに並んだ壁の棚を一段二段と降りてきて、とうとう俺の横にちょこんと座った。
「三毛ちゃん、可愛いねぇ。武蔵の妹なの?」
三毛ちゃんを撫でていると、俺も撫でろとばかりに武蔵が寄ってくる。
三毛ちゃんは猫パンチで武蔵を追い払った。
、、案外、気が強い子なのかな。。。
三毛ちゃんをなでなでしていると、ヨリくんがドアをノックした。
「ヒロ先生ー、まだ起きてる?一応出来たから見てー」
「うん、学術誌に出す論文書いてた」
「あれ、巴。もうヒロと仲良くなったの?」
「そりゃ、猫は人を見るからねー」
「そうかなー?」
「巴ちゃんっていうのかー、小さくて可愛いねー。
もう鼻で何回もチューされちゃったよ。
ヨリくんは、チューしてくれないの?」
「はい、チュー」
「雑ー。やり直しー。
ねー。たまには腕枕して欲しいなー」
「サエ(妹)が質問しに来るかもしれないでしょ?」
「えー、前はいつもしてくれたのにー」「はいはい、じゃー、明日、ちょっとデートしましょうねー」