ヒロ:ヨリくん怒ってないの?
ヒロ:浮気してるとか、思わなかった?
ヨリ:思ってないよ
ヒロ:なんで?
ヨリ:だって君は、そんな器用なことできる人じゃないでしょ
あー、むかつく。学食もパンしか残って無いし。
味のしないパンを飲み込んでいると、ゴリくんが隣に座った。
「ヒロキくん、どうしたのー?なんか怒っているみたい」
「怒ってない」
「もー、怒っている時のヒロキくんの顔だよー。
どうしたのー?俺にも言えない話ー?」
「いいから、ギュッてして」
「はいはい」
「俺と、後輩のゼンの写真が流出しちゃってさー。
ただの友達なのに、シノがこういうのは困るって怒っちゃってさー」
「あぁ、あれねー」
いつもの渡り廊下で、ゴリくんに愚痴を言う。
「まぁ、シンイチくんも学祭に向けてやることいっぱいあるんだから、
協力できることは協力してあげないとだよ」
「えーーー、ゴリくんもシノの味方なの?」
「ヒロキくんには、タダヨリくんが居るでしょー?」
「うーん、ヨリくんは、いつもシノの味方するからなー」
「じゃー、俺がなぐさめてあげないとだねー」
「うん、ありがとー」
「なんだお前ら、文春砲が炸裂したばっかりだってーのに、
相変わらず仲が良いなぁー」
「何だよグッチー。またからかいに来たのかよ?」
「あの写真、チャパとゴリだろ?LOVE LOVEだってよー。めちゃウケんだけど」
「??」「??」戸惑う俺たち。
「(小声)ごめん、適当に話合わせて」
「そうなんだよー。ゴリくんと一緒にいたら、写真撮られちゃってさー」
「勝手に写真流さないで欲しいよねー」
「しかし、upした奴も暇人だよな。
お前らがくっついているのなんて、いつもの事なのにな」
「そうだね、今日みたいにお天気がいい時の方が、よく写るのにね」
「お前らが肩組んでイチャイチャしてるとこ、目線でもつけて流したらウケんのかなー」
授業が終わり、ちょっと遅れてモス前に行くと、ヨリくんが待っていてくれた。
「ヨリくん、本当に怒ってないの?」
「怒ってないって言ったら、嘘になるかな」
「もー、そういうの、言ってくんなきゃわかんないよ」
「あのね、ヒロが浮気してるなんて全然思ってないってのは本当だよ?
でも、ゼンくんとかゴリくんと、イチャイチャしてるのは嫌」
「ヒロもまだ怒っているよね?」
「シノにガミガミ言われたことと、ヨリくんが味方してくれなかったこと」
「シノくんの味方なんかしてないよ」
「えー、絶対味方してた。でも、それはもういい。
そりゃ俺も、シノが言うことも判るよ?
でもさー、何で俺たちの関係を隠してまで、
やんなきゃいけないのかなって、そんな理由、何もないじゃん」
「そうだね。それは俺もちょっと考えた。
犯人探し?じゃないけど、ヒロのお相手探しが激しくなったら、
シノくんや頑張っている裏方の子達には悪いけど、
誰に何を言われようが、ヒロとの関係を公にしようと思った」
「本当に?」
「俺は本気だよ。だって、俺にとってはヒロが一番大事なんだもん。
他の人は関係ない」
嬉しいヨリくんの言葉。。。
嬉しくて、嬉しくて、なんか上手い返事が返せない。
「よくわかんないけど、判った」
「なんだよそれ!良いこと言ったつもりなのに」
「その、うまく言えないから、今日はうち寄ってくれる?」
「いつも家まで送ってるでしょ?」
「だから、その、俺の部屋に来てってこと」
ウチに入ると、ハルキがお出迎え。
「あー、ハルキくん。元気にしてたー?」
「ハルキ、なんかヨリくんにすごいなついてない?」
「猫は人を見るからねー」
ハルキは、俺の部屋まで着いてきて、
ベッドに座ったヨリくんの膝の上でゴロゴロ鳴いている。
「あのね、ありがとうって言いたいだけなんだけど。
なんか気持ちがグルグルしてて上手く言えないから、
ピアノ弾くね。面白くない曲だから、携帯とか見てていいよ」
エリック・サティ「3つのジムノペディ」
https://www.youtube.com/watch?v=YMyMKF-UpC4
派手でもないし、難しい曲でもないけれど、
弾いているうちに、イライラの紐が少しずつ解けていく。
何も喋らなくても、ヨリくんと一緒の空間を過ごしているのが嬉しい。
チラッと振り向くと、ヨリくんはハルキの頭をなでなでしていた。
「ハルキ、ごめん」「ウニャ」
3番を弾き始めると、ヨリくんは俺をそっと抱きしめた。
「もー、ピアノ弾いている時に、そういうことしないで」
「好き。君が好き」
「そーいうの、ずるいよ」
「俺が何でヒロのこと好きになったか、知ってる?」
「前に、顔って言ってたよね」
「あの時は、照れ臭くて顔って言ったけど、
本当は、ヒロがサックス吹いている所見て、一瞬でもってかれたんだよね」
「なにそれ?照」
「だから、今日は、俺のためだけに弾いてくれて、すごい嬉しい」
「そんな大したもんじゃないよ」
「明日、シノくんに謝りに行こうね」
「えー、シノにー?嫌」
「ヒロも言いすぎたって思ってるでしょ?」
「そりゃそうだけど、、どうせ、知るかバカ、で終わりだよ」
「言ったと言わないでは全然違うよ。俺も付いていってあげるから」
「やっぱりヨリくんって、シノの味方するよね」
「違うでしょ。ヒロの味方してるから言ってるんだよ」
「よくわかんない」
結局、ヨリくんとメグに平謝りして、
お昼は、ゴリくんと一緒に渡り廊下で軽食を食べたり、
数学を教えたりすることにした。
ゴリくんは思った以上にノリノリで、おにぎりを食べさせてくれたり、
お米粒を取ってくれたりと、マンガのようなラブラブを演出してくれた。
こーいうの、メグにやってあげてよ。
「ゴリくん、その問題に時間かけてるようじゃ、A判定はキツいかもよ」
「もー、ヒロキくん、ゴロゴロしてるだけで、勝手な事言わないでよー」
「ゴロゴロしてるだけじゃないよ。ChatGPTっていう人工知能がすごいみたいだから、
どんだけのレベルの問題解けるのか、試してるんだから」
「ヒロキくんってさー、顔は可愛いけど、けっこう鬼だよねー。
ちょっと嫌いになってきた」
「嫌いになってもいいよ。だって俺たちビジネスカップルじゃん」
「ビジネスって、ヒロキくん、そういうこと言わないでよー」
「じゃー、キスとか、、、してみる?」
「、、、して、みる、、?」
ゴリくんの顔が近づいてくる。
。。。。。
「って、やっぱ無理だよー。ヒロキくん、意地悪しないでよー」
「ゴリくん、顔がマジなんだもん。
ほんとにキスしちゃったら、どうしようって思ったー」