放課後、柔道場でダンスの練習。
柔道部は盛大な不祥事をしでかしたおかげで休部状態。
ニュースにもなっちゃったから、しょうがない。
ダン女の片隅で、練習練習。練習相手は、F4のツーくん。
台湾にいる時から耳にいくつもピアスを付けているので、
「刺刺」と書いて「ツーツー」って呼ばれてたみたい。
本名の胡(フー)って呼ぶ人は殆どいない。
ヒロより少し大きくてがっしりしてるけど、コロコロとした子犬みたいで、
人懐っこい感じの男の子。
「ヨリ先輩、集中してください。いつもここでモタモタしてます」
「ごめん、ここ、いつも振り飛んじゃう」
「ここの振りは細かいですけど、リードシンセに合わせてあるので、
シンセの音を歌いながらやると合わせやすいです」
「あー、なるほどね」
「先輩、ターンする時、首切ってください」
「あ、ごめん、忘れてた」
「ちゃんと首切らないと、目が回っちゃいますよ。ちょっとターンだけ練習しましょう」
練習を終え、外に出ると、朝から続いていた雨が止んでいた。
「雨、止んでて良かったね。
俺、今日歩きだから、途中まで一緒に帰ろうよ」
「はい」
「ごめんねー、いつも付き合ってもらちゃって」
「いえ、俺もちょっと強く言い過ぎていました。
松尾先輩にはいつも格好よくしていて欲しいので」
「気にしてないからいいよ。ダメな所ばっかでしょ?どんどん言ってね」
「でもツー君は、ダンス部の方でもやることあるんでしょ?」
「フリは動画で送ってもらえれば、後で見れるので、だいたい大丈夫です」
「すごいね、そんなこと出来んの?」
「まだまだ付き合いは短いですけれど、日本語のキズナですかね」
「家近いの?」
「ホームステイの家まで、歩いて10分くらいです」
「へー、近くて良いねぇ」
「それにしても、日本語、上手いよね。日本語学校とか行ってたの?」
「いえ、日本のマンガやアニメが好きなので、それを見て覚えました」
「へー、そんなんで、覚えられるんだ。すごいね。なんのアニメが好きなの?」
「最初は、ドラゴンボールでした。次はナルトです」
「王道だね」「王道ですね」
「ヨリ先輩は何か好きなアニメありますか?」
「俺らの世代なんて、スラムダンク終わったあとあたりだから、夢中になって見てたよ」
「スラムダンク、俺も見ました。映画も観に行きましたよ。ヤバかったです」
「もともと背が高かったし、中学の頃は、バスケ部に入ってた」
「あー、ゼンもバスケやってましたよ」
「先輩は何で、バレー部なんですか?」
「今はそうでも無いけど、ここのバスケ部、雰囲気悪くてねー。
だから、当時好きだった、」
「ハイキュー!」「パイジュウー!ですね」
ツーくん、正直、ヒロより話が合うかも。
「日本のマンガ、ホントに詳しいんだね。ジャンプだけ?」
「マガジンも読んでいますよ。フェアリーテイル、好きでした」
「東京リベンジャーズは?」
「読んだことないです」
「もう終わっちゃってんだけどね、今度貸してあげるよ」
「ヨリ先輩、変なこと聞いて良いですか?」
「え、うん、いいけど、何?」
「ヨリ先輩って、ヒロ先輩と付き合ってますよね?」
「え、何のこと?俺、あの人と付き合ってなんかないよ?」
「嘘つかないでください。ヨリ先輩のこと、ずっと見ていましたから、判りますよ」
「え?」