君が微笑んでくれるから Ep05雨宿り-3

君が微笑んでくれるから

放課後、柔道場でダンスの練習。
柔道部は盛大な不祥事をしでかしたおかげで休部状態。
ニュースにもなっちゃったから、しょうがない。
ダン女の片隅で、練習練習。練習相手は、F4のツーくん。

台湾にいる時から耳にいくつもピアスを付けているので、
「刺刺」と書いて「ツーツー」って呼ばれてたみたい。
本名の胡(フー)って呼ぶ人は殆どいない。
ヒロより少し大きくてがっしりしてるけど、コロコロとした子犬みたいで、
人懐っこい感じの男の子。

「ヨリ先輩、集中してください。いつもここでモタモタしてます」
「ごめん、ここ、いつも振り飛んじゃう」
「ここの振りは細かいですけど、リードシンセに合わせてあるので、
シンセの音を歌いながらやると合わせやすいです」
「あー、なるほどね」

「先輩、ターンする時、首切ってください」
「あ、ごめん、忘れてた」
「ちゃんと首切らないと、目が回っちゃいますよ。ちょっとターンだけ練習しましょう」

練習を終え、外に出ると、朝から続いていた雨が止んでいた。
「雨、止んでて良かったね。
俺、今日歩きだから、途中まで一緒に帰ろうよ」
「はい」

「ごめんねー、いつも付き合ってもらちゃって」
「いえ、俺もちょっと強く言い過ぎていました。
松尾先輩にはいつも格好よくしていて欲しいので」
「気にしてないからいいよ。ダメな所ばっかでしょ?どんどん言ってね」

「でもツー君は、ダンス部の方でもやることあるんでしょ?」
「フリは動画で送ってもらえれば、後で見れるので、だいたい大丈夫です」
「すごいね、そんなこと出来んの?」
「まだまだ付き合いは短いですけれど、日本語のキズナですかね」

「家近いの?」
「ホームステイの家まで、歩いて10分くらいです」
「へー、近くて良いねぇ」

「それにしても、日本語、上手いよね。日本語学校とか行ってたの?」
「いえ、日本のマンガやアニメが好きなので、それを見て覚えました」
「へー、そんなんで、覚えられるんだ。すごいね。なんのアニメが好きなの?」
「最初は、ドラゴンボールでした。次はナルトです」
「王道だね」「王道ですね」

「ヨリ先輩は何か好きなアニメありますか?」
「俺らの世代なんて、スラムダンク終わったあとあたりだから、夢中になって見てたよ」
「スラムダンク、俺も見ました。映画も観に行きましたよ。ヤバかったです」
「もともと背が高かったし、中学の頃は、バスケ部に入ってた」
「あー、ゼンもバスケやってましたよ」

「先輩は何で、バレー部なんですか?」
「今はそうでも無いけど、ここのバスケ部、雰囲気悪くてねー。
だから、当時好きだった、」
「ハイキュー!」「パイジュウー!ですね」
ツーくん、正直、ヒロより話が合うかも。

「日本のマンガ、ホントに詳しいんだね。ジャンプだけ?」
「マガジンも読んでいますよ。フェアリーテイル、好きでした」
「東京リベンジャーズは?」
「読んだことないです」
「もう終わっちゃってんだけどね、今度貸してあげるよ」

「ヨリ先輩、変なこと聞いて良いですか?」
「え、うん、いいけど、何?」
「ヨリ先輩って、ヒロ先輩と付き合ってますよね?」

「え、何のこと?俺、あの人と付き合ってなんかないよ?」
「嘘つかないでください。ヨリ先輩のこと、ずっと見ていましたから、判りますよ」
「え?」

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