「よし、決めた、この曲にする。
ゼン、今から、文化委員会の子一人借りてきて。
歌詞サイトから、歌詞を打ち直してもらう。俺は、ピアノ耳コピしてっから」
「ヒロ先輩、そんなことできるんですか?」
「うるさい!出来るから言ってんだよ」
「先輩、連れてきました」
「おー、キャッツアイ、悪い。この歌詞、打ち直して。
歌詞サイトって、コピペできないんだわ」
「はい」
「後でカキコミすっから、2小節で一行開けて」
「ヒロ先輩、これはコード譜ですか?」
「そ、コード譜、多分、これで合ってるから、セッション、セッション。
とりあえず弾くから歌え」
「歌詞ちゃんと覚えていません」
「俺も歌詞覚えていないから、鼻歌でいい。始めるぞ」
「はい」
「ヒロ先輩、すごいです。ほとんど完コピじゃないですか」
「もう一二回聴けば、完コピできると思う。
あと、面倒臭いから、ヒロで良い。敬語は禁止」
「それは問題ですね。先輩を呼び捨てにはできません」
「黙れ、俺が良いって言ってんだから良いんだよ」
「ゼン、2回目のサビから、カホン入れてみてくれる?」
「没問題(問題ない)。
ヒロ、このパート、何回か繰り返えして?バス、少し低いところに当ててみる」
「あーうん、その辺りの方が良いね」
「筒井先輩、歌詞の書き起こし終わりました」
「うん、ありがとう。助かった。じゃ、これ10部コピーしてきて。
あとテキストは俺のLINEにも送っておいて」
「はい、判りました」
「ごめんねー、遅くまで付き合ってもらっちゃって」
雨はすっかり上がって、帰り道は虫の声が聞こえてくる。
「いえ、曲がどんどん出来上がっていくので、とても夢中になりました」
「ゼンが色々アイデア出してくれるからだよー。ほんと助かった」
「いえ、ヒロ先輩が、リードしてくれたからですよ。
たくさん意見を言ってしまって、ごめんなさい」
「俺に生意気って言われたら、相当なもんだぞーー。
もっとぶつかって来いよ。仲間だろー」
はにかんでるゼンくん可愛いなぁ。
「あれにF4の、あ、F3か。F3のダンス、入れられるかなー」
「ゆっくりの曲なので、コンテンポラリーなら合うかもしれませんね」
「じゃー、やること増やしちゃって悪いけど、ちょっと考えておいてくれる?」
「没問題。今日の動画を、共有しておきます」
家が近いので、最近は、ダンス練の後、よくゼンと一緒に帰っている。
「あー、シノ、お疲れー」
「なんだ筒井と、林(リン)か、珍しい組み合わせだな」
「俺の新しい彼氏ー、凄いカッコいいでしょー。シノと違って、いつも優しいんだよ」
「お前なぁ、いい加減にしろよ」
「問題ありません。ヒロ先輩は僕の彼氏ではありません。
今日は一緒に、ダンスの練習をしていました」
「知ってるわ。筒井、例の件はくれぐれも内密にしろよ」
「いちいちうるせーなー。内緒にしてんじゃん」
「しかし、林、コイツ、ダンスなんてできんのか?」
「はい。思ったより物覚えが良くて、驚いていますよ」
「そうか。とにかく、筒井、留学生にまで迷惑かけんじゃねーぞ」
「はぁ?迷惑なんて、誰にもかけてねーだろ。
ねーー、ゼンー。あの人、いつも俺に命令ばっかしてくるんだよ。俺、あの人嫌いー」
腕にしがみついた。
「えーと、こういう時、どうしたら良いんですか?」
「知るか。一発殴れば黙るだろ」
「ヒロ先輩を殴ることなんてできません。僕の大切な仲間です」
ゼン優しー、大好き。
「知るかバカ、一生くっついていろ。帰る」
「シノってさー、なんでいつも上から目線なんだろー」
「そうですか?篠宮先輩は、すごく皆んなに慕われていますよ?
ヒロ先輩と、何かあったんですか?」
「知らねーよ。あいつがいつも、俺に突っかかってくんの」
「ねー、ゼンってさ、凄いかっこいいのにさー、彼女とか居ないの?」
「居ません」「台湾にも?」「はい」
「この子いいなーって子は?」
「恋バナですか、、、恋バナはちょっと苦手ですね」
「あー、この感じは居るなーー。正直になーれーなーれーー」
「居ません。でも、先輩は、もう大切な人、居ますよね?」
「さー、どうかなー。ま、いいや、
明日はヨリくんも呼ぶから、放課後はF4も第二に集合ね」
「はい。伝えておきます」
「あ、ゲリラが来る音がする」
「ゲリラ?何ですか?」
「これからスコールみたいな凄い雨が来るから、しばらく渡り廊下かどっかで雨宿りしていよ」
「あ、本当に降ってきましたね」
「ねー、シノってさー、なんでいつも上から目線なんだろー。俺、あいつ嫌い」
「そうですか?篠宮先輩は、すごく皆んなに慕われていますよ?
ヒロ先輩と、何かあったんですか?」
「知らねーよ。あいつがいつも、俺に突っかかってくんの」
「ヒロ先輩、好きの反対って何だと思いますか?」
「そりゃー、好きの反対は嫌いだろ?」
「違いますね。好きと嫌いは合わせ鏡みたいなもので、その反対は、無関心ですね。
今、ここに1つの石があります。ヒロ先輩は、この石について、何か思いますか?」
うー、上手く言い返す言葉が思いつかない、、、
「つまり、ヒロ先輩にとって、篠宮先輩は、この石より価値がある、ということになりますね。
どうか、ケンカしないでいてくれますか?僕、ヒロ先輩が怒っている顔、見たくないです」
あーーー、見事に証明されたーーー。
「わかった。年下に気を使わせちゃって、ゴメンね。できるだけ、仲良くする」
「そうですよ。それにネガティブな感情でいるより、ポジティブでいたほうが、ハッピーに過ごせますよ」