君が微笑んでくれるから Ep05雨宿り-2

君が微笑んでくれるから

「よし、決めた、この曲にする。
ゼン、今から、文化委員会の子一人借りてきて。
歌詞サイトから、歌詞を打ち直してもらう。俺は、ピアノ耳コピしてっから」
「ヒロ先輩、そんなことできるんですか?」
「うるさい!出来るから言ってんだよ」

「先輩、連れてきました」
「おー、キャッツアイ、悪い。この歌詞、打ち直して。
歌詞サイトって、コピペできないんだわ」
「はい」
「後でカキコミすっから、2小節で一行開けて」

「ヒロ先輩、これはコード譜ですか?」
「そ、コード譜、多分、これで合ってるから、セッション、セッション。
とりあえず弾くから歌え」

「歌詞ちゃんと覚えていません」
「俺も歌詞覚えていないから、鼻歌でいい。始めるぞ」
「はい」

「ヒロ先輩、すごいです。ほとんど完コピじゃないですか」
「もう一二回聴けば、完コピできると思う。
あと、面倒臭いから、ヒロで良い。敬語は禁止」
「それは問題ですね。先輩を呼び捨てにはできません」
「黙れ、俺が良いって言ってんだから良いんだよ」

「ゼン、2回目のサビから、カホン入れてみてくれる?」
「没問題(問題ない)。
ヒロ、このパート、何回か繰り返えして?バス、少し低いところに当ててみる」
「あーうん、その辺りの方が良いね」

「筒井先輩、歌詞の書き起こし終わりました」
「うん、ありがとう。助かった。じゃ、これ10部コピーしてきて。
あとテキストは俺のLINEにも送っておいて」
「はい、判りました」

「ごめんねー、遅くまで付き合ってもらっちゃって」
雨はすっかり上がって、帰り道は虫の声が聞こえてくる。
「いえ、曲がどんどん出来上がっていくので、とても夢中になりました」

「ゼンが色々アイデア出してくれるからだよー。ほんと助かった」
「いえ、ヒロ先輩が、リードしてくれたからですよ。
たくさん意見を言ってしまって、ごめんなさい」
「俺に生意気って言われたら、相当なもんだぞーー。
もっとぶつかって来いよ。仲間だろー」
はにかんでるゼンくん可愛いなぁ。

「あれにF4の、あ、F3か。F3のダンス、入れられるかなー」
「ゆっくりの曲なので、コンテンポラリーなら合うかもしれませんね」
「じゃー、やること増やしちゃって悪いけど、ちょっと考えておいてくれる?」
「没問題。今日の動画を、共有しておきます」

家が近いので、最近は、ダンス練の後、よくゼンと一緒に帰っている。
「あー、シノ、お疲れー」
「なんだ筒井と、林(リン)か、珍しい組み合わせだな」
「俺の新しい彼氏ー、凄いカッコいいでしょー。シノと違って、いつも優しいんだよ」

「お前なぁ、いい加減にしろよ」
「問題ありません。ヒロ先輩は僕の彼氏ではありません。
今日は一緒に、ダンスの練習をしていました」
「知ってるわ。筒井、例の件はくれぐれも内密にしろよ」
「いちいちうるせーなー。内緒にしてんじゃん」
「しかし、林、コイツ、ダンスなんてできんのか?」
「はい。思ったより物覚えが良くて、驚いていますよ」

「そうか。とにかく、筒井、留学生にまで迷惑かけんじゃねーぞ」
「はぁ?迷惑なんて、誰にもかけてねーだろ。
ねーー、ゼンー。あの人、いつも俺に命令ばっかしてくるんだよ。俺、あの人嫌いー」
腕にしがみついた。

「えーと、こういう時、どうしたら良いんですか?」
「知るか。一発殴れば黙るだろ」
「ヒロ先輩を殴ることなんてできません。僕の大切な仲間です」
ゼン優しー、大好き。
「知るかバカ、一生くっついていろ。帰る」

「シノってさー、なんでいつも上から目線なんだろー」
「そうですか?篠宮先輩は、すごく皆んなに慕われていますよ?
ヒロ先輩と、何かあったんですか?」
「知らねーよ。あいつがいつも、俺に突っかかってくんの」

「ねー、ゼンってさ、凄いかっこいいのにさー、彼女とか居ないの?」
「居ません」「台湾にも?」「はい」
「この子いいなーって子は?」

「恋バナですか、、、恋バナはちょっと苦手ですね」
「あー、この感じは居るなーー。正直になーれーなーれーー」
「居ません。でも、先輩は、もう大切な人、居ますよね?」
「さー、どうかなー。ま、いいや、
明日はヨリくんも呼ぶから、放課後はF4も第二に集合ね」
「はい。伝えておきます」

「あ、ゲリラが来る音がする」
「ゲリラ?何ですか?」
「これからスコールみたいな凄い雨が来るから、しばらく渡り廊下かどっかで雨宿りしていよ」
「あ、本当に降ってきましたね」

「ねー、シノってさー、なんでいつも上から目線なんだろー。俺、あいつ嫌い」
「そうですか?篠宮先輩は、すごく皆んなに慕われていますよ?
ヒロ先輩と、何かあったんですか?」
「知らねーよ。あいつがいつも、俺に突っかかってくんの」
「ヒロ先輩、好きの反対って何だと思いますか?」
「そりゃー、好きの反対は嫌いだろ?」
「違いますね。好きと嫌いは合わせ鏡みたいなもので、その反対は、無関心ですね。
今、ここに1つの石があります。ヒロ先輩は、この石について、何か思いますか?」
うー、上手く言い返す言葉が思いつかない、、、
「つまり、ヒロ先輩にとって、篠宮先輩は、この石より価値がある、ということになりますね。
どうか、ケンカしないでいてくれますか?僕、ヒロ先輩が怒っている顔、見たくないです」
あーーー、見事に証明されたーーー。
「わかった。年下に気を使わせちゃって、ゴメンね。できるだけ、仲良くする」
「そうですよ。それにネガティブな感情でいるより、ポジティブでいたほうが、ハッピーに過ごせますよ」

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