二学期が始まってしまうと、夏休みの時のように、時間が自由にならない。
今日は朝から雨が降っていて憂鬱だし、そろそろもう一曲、何にするか決めなきゃだし。
あー、めんどくさー。
「ツッチー、帰りにモス寄ってかない?」
「ミッキー、ごめん。今日、近所の中学生の、
家庭教師する約束しちゃっててさー」
「何だよ、お前、最近、付き合い悪いよなー」
家庭教師ってのはウソで、本当はダンスの練習。
ヨリくんとは別行動で、第二視聴覚室で、F4のゼンくんと待ち合わせ。
「ごめん、遅くなっちゃって」
「問題ありません。僕もさっき来たところです」
ゼンくんとツーくんは台湾からの留学生。
二人とも日本に来て1年ちょっとだけど、フツーに日本語話しててすごいよなぁ。
ゼンくんは中学の時にバスケをやっていたそうで、
すごく背が高いし、モデルさんみたいでかっこいい。
「あー、上の衣装出来たんだー、ちょっと着てみてよ」
「ちょっと恥ずかしいですね。はい、どうですか?」
「おー、すげー格好いいじゃーん。さすがF4。写真撮ろー」
「先輩と、ツーとライトの衣装は、もう少しかかるみたいですよ」
「俺も着てみていい?」
「はい、でも、サイズ合わないと思います」
「ほんとだー、カッコいい感じだけど全然合わない。肩ぶかぶか」
「写真撮りますか?」
「うん」
ゼンくんはカホンという箱のようなパーカッションができるということで、
振り合わせのついでに、俺のキーボードとセッションして遊んでいた。
「おー、イッちゃん、何か用?」
「あの、カホンという楽器を見てみたくて」
「やっぱ気になる?」
「えぇ、部活では使わない楽器なので」
「結構面白いよ。軽くセッションするから、聞いてよ」
福山雅治 – Squall
https://www.youtube.com/watch?v=rZSQbQtrLds
kb&voヒロキ、pcs增增
「どう?」
「ただの箱みたいですけど、結構いろんな音が出せるんですね。持ち運びもできて便利ですね」
「昼休みとか、時間あったらゼンくんに教えてもらいなよ」
「えっ、はい。ゼンくんが良ければ」
「マサキも呼んで、一緒に教えてもらいなよ」
「問題ありませんよ。朝とか、放課後の時に、教えますよ」
「でも、イッちゃーん、ゼンくん凄いカッコいいから、ドキドキしちゃうでしょー」
「えぇ、まぁ、、、そうですね」
「この曲、学祭の音楽室イベントでやったら、良いんじゃないですか?」
「うーん、スケジュールギチギチだけどなー、
土曜5時前のスペシャルイベントみたいな感じで入れてみっか」
「それでは、ツーも呼ぶので、もう一曲くらい考えましょう」
「あーー宿題増やしちゃったかー」
「色々参考になりました。じゃあ私、練習に戻ります。ゼンくん、後でLINE教えてね」
ペコリとお辞儀して、イッちゃんが去っていった。
「さー、切り替え切り替え。そろそろ、ステージ一曲目決めないと、シノがガミガミ言いにくるぞ」
「そうですね、二曲目がアップテンポな曲なので、バラードが王道でしょうね」
「バラードねぇ、なんかいいのある?」
「僕、台湾にいた時から、ユードゥオディェングァンの曲が好きなんです。
台湾でも人気のある日本の有名なアーティストです。コンサートにも行きました」
「ユードー?誰それ?」
「あ、ごめんなさい。えーと、漢字で書きます」
宇多田光。
「あー、宇多田ヒカルね。だとしたらFirst Love?」
「First Love、ツーと一緒に、ネトフリで見ましたよ。
とても良い曲だったので、ツーと一緒に遊びでフリを作りました」
「えー、動画撮ってある?」
「はい、、、えーと、、、、はい、これです」
ゼンくん、素直で可愛いな。気持ち、ちょっと近くに寄っちゃった。
「えー、すげー。これでいいじゃん。これにしようよー?」
「でも、メジャーな曲が2曲続くのはあざといですよね?」
「うーん、でもさー、俺たちが組んでいる所は初めての人がほとんどだし、
わかりやすい曲の方が良いと思うけどなぁ」
「あ、そうだ、ヒロ先輩、この曲聴いてもらえますか?」
ゼンくんはiPhoneを操作して、オススメの曲を聞かせてくれる。
「へー、初めて聴いた。いい曲じゃん。でも、もっとあざとくない?」
「はい、恋人ができたら、カラオケで歌いたいです照」
「あー、ゼンくん照れてるー。かわいー」