翌日は、ヨリくんが俺ん家に。
そういえばヨリくんの私服姿、初めて、ちゃんと見たかも。
やっぱ、すごいカッコいい。大好き。
玄関先でハグしてると、ハルキがやってきた。
「ハルキくん、初めまして。ヒロの彼氏ですよー」
ハルキは品定めをするように、俺の足元をくるくると回りながら、ヨリくんを見ている。
「お邪魔してもいい、よね?」
ヨリくんが玄関に上がると、ヨリくんの匂いを嗅いで、額を擦りつけた。
「気に入ってもらえたみたいだね」
ハルキはいきなりヨリくんに懐いてくれたみたい。
「ハルキくん、写真で見るより、ずっとイケメンだね」
俺の部屋までついてきて、ヨリくんの膝の上でゴロゴロ鳴いている。
ハルキ、ヨリくんは俺んだかんな。
「もー、ハルキばっかりなでなでしないで」
「はいはい、ヒロも可愛いよ。こっちおいで」
「ハルキくん、モフモフだし、すごく大きいよね。武蔵より重い」
「ノルウェイジャンだからね。今、6kgくらいあるよ」
「でかっ。武蔵だって5kgだよ」
「和猫で5kgはかなりでかいでしょー」
「合宿所でもそうだったけどノートいっぱいあるね」
「数学の問題。何か思いついたらすぐ書けるように、ノート広げてる」
「ヒロでも解けない問題があるの?」
「そんなん、ゴロゴロあるよ。何人もの学者が寄ってたかって研究して、
100年かけても解けないようなのが」
「見てもいい?」
「いいけど見てもわかんないと思う」
「ほんとだ全然わかんない」
「自分でも解けるとは思ってないけど、暇つぶしみたいなもんだよ」
「ピアノあるね、弾けるの?」「それなりに」
「なんか弾いてよ」「何が良い?」
「クラシック、わかんないから、ヒロに任せる」
「ポップスだって弾けるわ」
鍵盤に向かう。そういえば前は月光、良く弾いてたなー。
いくつか白鍵をつまびいた後、指がゆっくり走り出す。
ヴェートーベン「悲愴、第2楽章」
https://www.youtube.com/watch?v=u55JQtYayz8
この曲、「悲愴」ってわりには、甘いメロディー。
「あー、この曲、なんか聞いたことある」
「何百年も前の曲だけど、みんななんとなく知ってるのって凄いよね」
「このサビの所、好き。繰り返えしてくれる?」
繰り返すと、ヨリくんは後ろから抱きしめてきた。
「そんなぎゅーってされたら、弾けないよ」
「いーから続けて」
ハルキは玄関が空いた音を聞いて、どこかに行ったみたい。
「ヒロ、なんでだろ、
一昨日より昨日よりどんどん好きになってる」
「俺も、大好き。いつも好き」
鍵盤はフレーズの途中で止まった。