君が微笑んでくれるから Ep04 F4-2

君が微笑んでくれるから

翌日は、ヨリくんが俺ん家に。
そういえばヨリくんの私服姿、初めて、ちゃんと見たかも。
やっぱ、すごいカッコいい。大好き。
玄関先でハグしてると、ハルキがやってきた。

「ハルキくん、初めまして。ヒロの彼氏ですよー」
ハルキは品定めをするように、俺の足元をくるくると回りながら、ヨリくんを見ている。
「お邪魔してもいい、よね?」
ヨリくんが玄関に上がると、ヨリくんの匂いを嗅いで、額を擦りつけた。
「気に入ってもらえたみたいだね」

ハルキはいきなりヨリくんに懐いてくれたみたい。
「ハルキくん、写真で見るより、ずっとイケメンだね」
俺の部屋までついてきて、ヨリくんの膝の上でゴロゴロ鳴いている。
ハルキ、ヨリくんは俺んだかんな。

「もー、ハルキばっかりなでなでしないで」
「はいはい、ヒロも可愛いよ。こっちおいで」

「ハルキくん、モフモフだし、すごく大きいよね。武蔵より重い」
「ノルウェイジャンだからね。今、6kgくらいあるよ」
「でかっ。武蔵だって5kgだよ」
「和猫で5kgはかなりでかいでしょー」

「合宿所でもそうだったけどノートいっぱいあるね」
「数学の問題。何か思いついたらすぐ書けるように、ノート広げてる」
「ヒロでも解けない問題があるの?」
「そんなん、ゴロゴロあるよ。何人もの学者が寄ってたかって研究して、
100年かけても解けないようなのが」

「見てもいい?」
「いいけど見てもわかんないと思う」
「ほんとだ全然わかんない」
「自分でも解けるとは思ってないけど、暇つぶしみたいなもんだよ」

「ピアノあるね、弾けるの?」「それなりに」
「なんか弾いてよ」「何が良い?」
「クラシック、わかんないから、ヒロに任せる」
「ポップスだって弾けるわ」

鍵盤に向かう。そういえば前は月光、良く弾いてたなー。
いくつか白鍵をつまびいた後、指がゆっくり走り出す。
ヴェートーベン「悲愴、第2楽章」
https://www.youtube.com/watch?v=u55JQtYayz8

この曲、「悲愴」ってわりには、甘いメロディー。
「あー、この曲、なんか聞いたことある」
「何百年も前の曲だけど、みんななんとなく知ってるのって凄いよね」
「このサビの所、好き。繰り返えしてくれる?」

繰り返すと、ヨリくんは後ろから抱きしめてきた。
「そんなぎゅーってされたら、弾けないよ」
「いーから続けて」
ハルキは玄関が空いた音を聞いて、どこかに行ったみたい。

「ヒロ、なんでだろ、
一昨日より昨日よりどんどん好きになってる」
「俺も、大好き。いつも好き」
鍵盤はフレーズの途中で止まった。

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