「ただいまー」
ヨリくんちは学園から自転車で10分くらいのところにある一軒家。
ウチから歩いても10分くらいかな。案外近い。
ご両親と妹がいるらしいけど、今日は誰もいないみたい。
ヨリくんが、玄関に上がると、茶トラの武蔵くんが、ヨリくんの足元に擦り寄ってきた。
「あー、おっきー可愛いー。ヨリくん、モテモテじゃーん」
「でも、ちょっと緊張してるかもしんないなー」
ヨリくんの部屋に入る。割と整理された部屋。
「洗濯物とか出しちゃうから、そこ座っててね」
ヨリくんのベッドに座ってると、武蔵くんが、ベッドに乗ってきた。
後足を、ピーンって伸ばして座ってる。変な子。
「武蔵くん、こんばんわ。ヨリくんの彼氏ですよー。
武蔵くん、大きいね。お腹触ってもいい?」
武蔵くんは鼻触っても肉球触っても、
尻尾で返事してくれるだけで、全然動かない。
「あー、ゴメンゴメン、武蔵、こんなところに居たのか」
「武蔵くん、あちこち触っても、全然嫌がらないね。こんな子居るんだね」
「武蔵、あっち行ってくれない?お兄ちゃんの彼氏が来てるの」
相変わらず尻尾返事だけで、全然動かない。
「マンガ、一杯あるね」
「そお?普通、これくらい買ってると思うけど」
「ヒロは、マンガ買わないの?タブレット派?」
「マンガ、買わないなー」
「じゃー、ゲームしてんの?」
「ゲームもそんなにしない」
「東リベ、面白いよ。読んでみてよ」
ポンと単行本を投げられた。
「最近のマンガ、読み方が判んないんだよなー」
「ヒロは、普段、家で何してんの?」
「ピアノ弾いたり、ハルキと遊んだり、数式解いたり」
「それって面白いの?」
「面白くなかったら、わざわざやらないでしょ」
「ねー、武蔵くん、全然、動いてくれないね」
「こうなっちゃうとご飯の時間まで動かないと思う」
「じゃあご飯の時間まで、お腹ポヨポヨしてる」
ポヨポヨしていると、ヨリくんが隣に座ってきた。
「ヒロは、ご飯の時間まで、待ってられますか?」
「武蔵くんが見てるから、だめ」
「じゃー、5秒でいいから、目、閉じていてくれますか?」
「はい照」