君が微笑んでくれるから Ep04 F4-1

君が微笑んでくれるから

「ただいまー」
ヨリくんちは学園から自転車で10分くらいのところにある一軒家。
ウチから歩いても10分くらいかな。案外近い。
ご両親と妹がいるらしいけど、今日は誰もいないみたい。
ヨリくんが、玄関に上がると、茶トラの武蔵くんが、ヨリくんの足元に擦り寄ってきた。
「あー、おっきー可愛いー。ヨリくん、モテモテじゃーん」
「でも、ちょっと緊張してるかもしんないなー」

ヨリくんの部屋に入る。割と整理された部屋。
「洗濯物とか出しちゃうから、そこ座っててね」
ヨリくんのベッドに座ってると、武蔵くんが、ベッドに乗ってきた。
後足を、ピーンって伸ばして座ってる。変な子。

「武蔵くん、こんばんわ。ヨリくんの彼氏ですよー。
武蔵くん、大きいね。お腹触ってもいい?」
武蔵くんは鼻触っても肉球触っても、
尻尾で返事してくれるだけで、全然動かない。

「あー、ゴメンゴメン、武蔵、こんなところに居たのか」
「武蔵くん、あちこち触っても、全然嫌がらないね。こんな子居るんだね」
「武蔵、あっち行ってくれない?お兄ちゃんの彼氏が来てるの」
相変わらず尻尾返事だけで、全然動かない。
「マンガ、一杯あるね」
「そお?普通、これくらい買ってると思うけど」

「ヒロは、マンガ買わないの?タブレット派?」
「マンガ、買わないなー」
「じゃー、ゲームしてんの?」
「ゲームもそんなにしない」

「東リベ、面白いよ。読んでみてよ」
ポンと単行本を投げられた。
「最近のマンガ、読み方が判んないんだよなー」

「ヒロは、普段、家で何してんの?」
「ピアノ弾いたり、ハルキと遊んだり、数式解いたり」
「それって面白いの?」
「面白くなかったら、わざわざやらないでしょ」

「ねー、武蔵くん、全然、動いてくれないね」
「こうなっちゃうとご飯の時間まで動かないと思う」
「じゃあご飯の時間まで、お腹ポヨポヨしてる」

ポヨポヨしていると、ヨリくんが隣に座ってきた。
「ヒロは、ご飯の時間まで、待ってられますか?」
「武蔵くんが見てるから、だめ」
「じゃー、5秒でいいから、目、閉じていてくれますか?」
「はい照」

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