君が微笑んでくれるから Ep02天敵-3

君が微笑んでくれるから

翌日。
フィクサーは思ったより近くに居た。
学食で朝食を食べていると、「よぉ、お二人さん」と。
文化委員会委員長の篠塚シオン。

合気道部のシノは、俺よりほんっの少しだけ背が高い、一軍男子。
ジュンコちゃんと付き合っているのは公認。
からかうとすぐムキになるから面白れーんだ。

文系の特待生はシノ、理数系の特待生は俺。
お互い意識しているのか、顔を合わせるたびに口喧嘩しちゃう感じ。

「松尾、筒井。今回は、共同企画に賛同してくれて、感謝する」
「シノ、オメーが居るんなら、シノが出れば良いじゃん
シノせんぱーい、かっこいいーって黄色い声が聞こえてくるわー」
「松尾はまだしも、何度リサーチしてもお前みたいなバカに人気があってだな、
どうにも女の感性ってのは理解できん」
「俺の普段の行いが良いからじゃない?」
「お前なんて、三木や錦織が居なかったら、厄介者も良い所だ。
それにだな、おまえらみたいなフリー(彼女なし)なやつが舞台に上がってた方が、
女子生徒も盛り上がるってもんだろ」

「はぁ?オメーふざけてんのか?俺、フリーなんかじゃねーわ」
え?学食、こんなに静かになる?
俺、余計なこと言っちゃったかも、、。

ヨリくんの方をチラッと見ると、あからさまに目を逸らしてる。
余計バレるじゃん、、、。
「その話、俺は聞いてないぞ」
「そんなの、いちいちお前に教える必要ねーだろ」

「あのさ、シノ、さっきからだけどさ。なんか怒ってない?」
「怒ってねーけどさ、オメーみたいなバカが、
運動部の活動費を削ってったってのが、どうしても気に入らねーんだよ」
「いつの話してんだよ?それに、カガセン(加賀先生。部活動の予算の取りまとめ)と、
直接交渉しちゃいけないってルールは無かっただろ?
前年比40%減だろ?活動していない運動部もあるから、妥当ってもんだろ」
「ルールはルール。でもモラルってもんがあるだろ。チビが偉そうなこと言うな!」

「背なんて、俺とそんなに変わんないじゃん」
「お前より3cm高い」
「それにさ、オメーらが、不祥事を起こさなければ、、、」
「そこに付け込んできたのがウゼーって言ってんだよ」

「はいはい、やめやめ、、やめようねーーー」
ヨリくんが間に入ってくれてハッとした。
お互い胸ぐらを掴んでいて、何か急に恥ずかしくなった。
「後輩も見てるんだよ。2人とも仲良くしようね。はい、皆んなに謝る」

「朝から大きな声出してごめんなさい、、」
「こんなバカ相手に取り乱してしまい、申し訳ない、、、」
「ヒロもシノくんも、怒っている顔より、笑っている顔の方が好きだよ、ね?
みんなも笑ってて欲しいよね?」
ヨリくんは、俺とシノの頭をコツンと叩いた。
「キャッ」ていう黄色い声が聞こえたような気がした。

「シノくんは、格闘家なんだから、素人に手を出したら、アウト、判るよね?」
「、、猛省する、、」
「ヒロは、スライム並みに弱いんだから、すぐ怒って、相手に歯向かわないでね」
「はぁ?スライムって何だよ?」
「そういうところだよ。イラっとしても、一旦飲み込もうね?」
「、、はい、ごめんなさい、」
「じゃぁ、お互い握手」
シノが手を差し伸ばしてくる。
俺とヨリくんも手を伸ばして握手した。

「えー。朝からみっともない姿を見せてしまい、申し訳ない。
不本意ではあるが、このバカのお陰で、文化系の予算が増えたのは確かだ」
「おめー。褒めるんなら褒め方ってもんがあんだろ!」
「すぐ怒らないの!」

「それに加え、今回の学祭は、学園人気No1No2である、
運動部より松尾タダヨリ、花園ヒメコ、
文化部より筒井ヒロキ、梅谷ツカサの参加が確定した。
多少、気に食わない奴も含まれるが、やっとマスクなしで皆んなの笑顔を見れるようになった。
コロナ後初の学祭ということもあり、過去最大の盛り上がりとなるはずです。
4人の人気に負けないよう、最高の学祭を作り上げていきましょう!」
「はいっ!」

一瞬で、雰囲気が引き締まった。シノの統率力、すげーー。
シノは俺の肩を叩いた。
「花園と梅谷は昼から合流。お前ら、合宿延長だかんな」

部屋に戻ってヨリくんと寄り添っている。
「ヒロ、まだ怒ってるでしょ?」
「もっとぎゅーってして」
「シノくんも、やること沢山あって、いっぱいいっぱいなんだから、
手伝えるところは助けてあげようね」
「ヨリくんって、シノの味方ばっかりするよねー」
「そんなこと無いよ」

気持ちを抑えるって、何なんだろう?
たいていの数式は5秒で解けるけど、人間関係ってムズすぎるよ。

ただ、ヨリくんの腕に包まれていると、そんなことどうでもいいやって思えてくる。
このイライラも5秒したら、きっと、どうでも良くなる。
そんなことより、もっとたくさんの時間、ヨリくんの音を感じていたい。

小虎の独り言:
Ep.2はここで終わりです。
長いと思ったら、案外短かったw
もたもたしてるとオリンピック始まっちゃいますね。
来週からEp.3始めます。

宮田ハルマ
元野球部部長。
宮高は髪型自由ですが、丸坊主の黒眼鏡。
ゴシップが大好きで、新聞部や文化委員会とも仲が良いです。

篠宮シオン/シノくん
黒髪でいつもソフトリーゼント。
あまり体格には恵まれていませんが、かなりの猛者です。
文系の特待生で、何かとヒロと比べられるのが気に入っていません。

宮城ケンゴ/宮城先生
高橋和臣さんみたいなthe好青年のイメージです。
こんな先生居たら、女子生徒からキャーキャーでしょうが、もう結婚しています。
何かと、ヒロを気にしてくれているし、生徒からも人気があります。

ヒロは、面倒くさそうですが意外と単純で、背が高くて優しい人が好きなので、
宮城先生のことも、本当は大好きです。

Tpショウ2年生、tsaxダイゴ2年生、wbリュウジ2年生、pcsマサキ1年生。
ショウとマサキは、それぞれのお母さんが嵐の熱烈なファンだったので、名付けられたみたい。
ダイゴはダイレンジャー、リュウジはデカレンジャーから名前をいただきました。

PE’Z「Akatsuki」
https://www.youtube.com/watch?v=gET09aOXZXI
マイナーな曲になるのかな?
男5人ということで、選びました。
ちょっと夕暮れみたいな、侍みたいな不思議な力強さや寂しさのある曲ですよね。

そんなわけでEp.3は合宿編の続きになります。
学祭に向けて、あれやこれやと駆け回ります。

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