翌日。
フィクサーは思ったより近くに居た。
学食で朝食を食べていると、「よぉ、お二人さん」と。
文化委員会委員長の篠塚シオン。
合気道部のシノは、俺よりほんっの少しだけ背が高い、一軍男子。
ジュンコちゃんと付き合っているのは公認。
からかうとすぐムキになるから面白れーんだ。
文系の特待生はシノ、理数系の特待生は俺。
お互い意識しているのか、顔を合わせるたびに口喧嘩しちゃう感じ。
「松尾、筒井。今回は、共同企画に賛同してくれて、感謝する」
「シノ、オメーが居るんなら、シノが出れば良いじゃん
シノせんぱーい、かっこいいーって黄色い声が聞こえてくるわー」
「松尾はまだしも、何度リサーチしてもお前みたいなバカに人気があってだな、
どうにも女の感性ってのは理解できん」
「俺の普段の行いが良いからじゃない?」
「お前なんて、三木や錦織が居なかったら、厄介者も良い所だ。
それにだな、おまえらみたいなフリー(彼女なし)なやつが舞台に上がってた方が、
女子生徒も盛り上がるってもんだろ」
「はぁ?オメーふざけてんのか?俺、フリーなんかじゃねーわ」
え?学食、こんなに静かになる?
俺、余計なこと言っちゃったかも、、。
ヨリくんの方をチラッと見ると、あからさまに目を逸らしてる。
余計バレるじゃん、、、。
「その話、俺は聞いてないぞ」
「そんなの、いちいちお前に教える必要ねーだろ」
「あのさ、シノ、さっきからだけどさ。なんか怒ってない?」
「怒ってねーけどさ、オメーみたいなバカが、
運動部の活動費を削ってったってのが、どうしても気に入らねーんだよ」
「いつの話してんだよ?それに、カガセン(加賀先生。部活動の予算の取りまとめ)と、
直接交渉しちゃいけないってルールは無かっただろ?
前年比40%減だろ?活動していない運動部もあるから、妥当ってもんだろ」
「ルールはルール。でもモラルってもんがあるだろ。チビが偉そうなこと言うな!」
「背なんて、俺とそんなに変わんないじゃん」
「お前より3cm高い」
「それにさ、オメーらが、不祥事を起こさなければ、、、」
「そこに付け込んできたのがウゼーって言ってんだよ」
「はいはい、やめやめ、、やめようねーーー」
ヨリくんが間に入ってくれてハッとした。
お互い胸ぐらを掴んでいて、何か急に恥ずかしくなった。
「後輩も見てるんだよ。2人とも仲良くしようね。はい、皆んなに謝る」
「朝から大きな声出してごめんなさい、、」
「こんなバカ相手に取り乱してしまい、申し訳ない、、、」
「ヒロもシノくんも、怒っている顔より、笑っている顔の方が好きだよ、ね?
みんなも笑ってて欲しいよね?」
ヨリくんは、俺とシノの頭をコツンと叩いた。
「キャッ」ていう黄色い声が聞こえたような気がした。
「シノくんは、格闘家なんだから、素人に手を出したら、アウト、判るよね?」
「、、猛省する、、」
「ヒロは、スライム並みに弱いんだから、すぐ怒って、相手に歯向かわないでね」
「はぁ?スライムって何だよ?」
「そういうところだよ。イラっとしても、一旦飲み込もうね?」
「、、はい、ごめんなさい、」
「じゃぁ、お互い握手」
シノが手を差し伸ばしてくる。
俺とヨリくんも手を伸ばして握手した。
「えー。朝からみっともない姿を見せてしまい、申し訳ない。
不本意ではあるが、このバカのお陰で、文化系の予算が増えたのは確かだ」
「おめー。褒めるんなら褒め方ってもんがあんだろ!」
「すぐ怒らないの!」
「それに加え、今回の学祭は、学園人気No1No2である、
運動部より松尾タダヨリ、花園ヒメコ、
文化部より筒井ヒロキ、梅谷ツカサの参加が確定した。
多少、気に食わない奴も含まれるが、やっとマスクなしで皆んなの笑顔を見れるようになった。
コロナ後初の学祭ということもあり、過去最大の盛り上がりとなるはずです。
4人の人気に負けないよう、最高の学祭を作り上げていきましょう!」
「はいっ!」
一瞬で、雰囲気が引き締まった。シノの統率力、すげーー。
シノは俺の肩を叩いた。
「花園と梅谷は昼から合流。お前ら、合宿延長だかんな」
部屋に戻ってヨリくんと寄り添っている。
「ヒロ、まだ怒ってるでしょ?」
「もっとぎゅーってして」
「シノくんも、やること沢山あって、いっぱいいっぱいなんだから、
手伝えるところは助けてあげようね」
「ヨリくんって、シノの味方ばっかりするよねー」
「そんなこと無いよ」
気持ちを抑えるって、何なんだろう?
たいていの数式は5秒で解けるけど、人間関係ってムズすぎるよ。
ただ、ヨリくんの腕に包まれていると、そんなことどうでもいいやって思えてくる。
このイライラも5秒したら、きっと、どうでも良くなる。
そんなことより、もっとたくさんの時間、ヨリくんの音を感じていたい。
小虎の独り言:
Ep.2はここで終わりです。
長いと思ったら、案外短かったw
もたもたしてるとオリンピック始まっちゃいますね。
来週からEp.3始めます。
宮田ハルマ
元野球部部長。
宮高は髪型自由ですが、丸坊主の黒眼鏡。
ゴシップが大好きで、新聞部や文化委員会とも仲が良いです。
篠宮シオン/シノくん
黒髪でいつもソフトリーゼント。
あまり体格には恵まれていませんが、かなりの猛者です。
文系の特待生で、何かとヒロと比べられるのが気に入っていません。
宮城ケンゴ/宮城先生
高橋和臣さんみたいなthe好青年のイメージです。
こんな先生居たら、女子生徒からキャーキャーでしょうが、もう結婚しています。
何かと、ヒロを気にしてくれているし、生徒からも人気があります。
ヒロは、面倒くさそうですが意外と単純で、背が高くて優しい人が好きなので、
宮城先生のことも、本当は大好きです。
Tpショウ2年生、tsaxダイゴ2年生、wbリュウジ2年生、pcsマサキ1年生。
ショウとマサキは、それぞれのお母さんが嵐の熱烈なファンだったので、名付けられたみたい。
ダイゴはダイレンジャー、リュウジはデカレンジャーから名前をいただきました。
PE’Z「Akatsuki」
https://www.youtube.com/watch?v=gET09aOXZXI
マイナーな曲になるのかな?
男5人ということで、選びました。
ちょっと夕暮れみたいな、侍みたいな不思議な力強さや寂しさのある曲ですよね。
そんなわけでEp.3は合宿編の続きになります。
学祭に向けて、あれやこれやと駆け回ります。