しばらくくっついていると、文化委員会の子がノックした。
「あぁ、丁度よかった。実はですね、学祭を盛り上げるために、
運動部と、文化部共同で出し物をしたらいいのではという提案がありまして、
その、松尾先輩と、筒井先輩って、凄い人気あるじゃないですか」
「人気なんかねーわ」
「ないない」
「それが、あるんですよ。人気。
学園内のアンケートでも常に上位1、2位は先輩方ですしー」
こいつ、グイグイくるな、、、
「それでですね、5分か10分くらいでいいんですけど、
先輩たちが歌ったりして盛り上げてくれたらなという提案なんですけど」
「無理無理、ちょっと歌うくらいならいいけど、10分ももたないって」
「それで学祭が盛り上がるんなら、いいんじゃないの?
俺たち、最初で最後の学祭だもんね」
「はい、それじゃぁ、そういうことで進行します」
ヨリくん、OKなの?何でー???
あの野郎に言われるがまま、手芸部に。
「ねー、モモカー、学祭で使う衣装、作ってくんない?」
ヨリくんはダンス部女子のエミリに話を付けて、結局は合同で話し合うことになった。
「チャパはー、弟キャラって設定で、ちょっと袖が余っているあざと系がいいかもね」
「楽器演奏するかもしんないから、普通の袖にして。あと、チャパって言うな」
「だったらー、ヨリくんはシュッとした黒いタキシードとかだと、対比になるよね」
「タキシードだと動けないでしょ?」
「私、男子に聞いたことあるんですけど、裁縫を工夫するとタイトめな衣装でも、
簡単には破れないみたいです」
「筒井先輩の方には、腰紐みたいの仕込んでおくと、ターンした時にふわっと広がって映えるかもしれませんね」
「二人とも白系で、チャパは裾を長めにして、ヨリくんはタイトめにしたら、
対比になっていいかもしんないね」
「曲はキンプリとかでー。ちょっとベタになっちゃうかなー」
「キンプリ良いんじゃないですか?だったら二人とも白が絶対に良いと思います。
多分、黒系の衣装だと体育館では引っ込んで見えちゃうと思います」
「お二人が見つめあって手を合わせたりー、際どく接近しちゃったりとかしたらー、
匂わせ感が、たまんないですよねー」
結局、ほとんど口を挟めないまま、会議は終わった。
おかしい、話が速く進みすぎている。こんなん、宮田だけじゃ出来ない。
「ヨリくん、俺たち、なんかハメられてない?」
「これは裏に誰か居るね、、、」
合宿所に戻る途中の渡り廊下、向こうからは体育の宮城先生。
N体大卒で新任で入ってきたばっかだから、
お兄さんって言ってもおかしくないくらいの歳の差だろう。
教師ってのも、結構大変な職業だよなー。
「今晩わー」
「おぅ、筒井。手の具合はどうだ?」
「ほら、もう完全に治ってるって」
「おぅ、綺麗に治って良かったな」
「だから、最初から大した事ないって言ってんじゃん。
先生の足はもう完全に治ってますね」
「全然大丈夫だけどな。少しは心配しろ」
「しかし、こんな時間に筒井と松尾か、珍しい組み合わせだな」
「はい。文化委員会の合宿に参加していまして」
「松尾、それは災難だな。筒井は生意気だけど、
悪い奴ではないから仲良くしてやってくれ」
「はい、仲良くやっています」
「そうかー?こいつと仲良くできる奴の気が知れん」
「先生のくせに、生意気って何だよ」
「ほら、すぐ怒らない!お前ももう成人になるんだぞ」
髪を無造作になでなでされた。
「そんなん、しらねーよ」
「とにかく、もう、遅いから合宿所に戻りなさい」
「はーい」
「何なんだよ、あいつ。いつも俺をガキ扱いしやがって」
「でも、ヒロ、宮城先生の事、けっこう好きでしょー?」
「あんな脳筋野郎、好きじゃねーわ、、、」
「さっき、ヒロの甘い匂いがした」
「やめて、その超能力」