でかっ、顔小さっ。
これが8等身ってやつ??ってのが、ゼンの第一印象だった。
いかにも体育会系の、誰がどう見たって爽やかな好青年だ。
うかつにもタンクトップなんか着ているもんだから、
隠しようもない太い腕と、胸筋の谷間が、目に入った。
普段はシュッとした感じだけど、話していると案外ひょうきんな顔を見せるんだ。
そういう、俺にしか見せない表情が、可愛い。
なんでだかよくわかんないけど、
すげー話が合って、ツボが同じっていうのかな?
掲載が始まったばかりの日本の鬼が出てくるマンガの話で、
泣いたり笑ったりもした。
後から聞いて知ったんだけど、ゼンゼンはバイトでモデルをやっていた。
だから当然、女の子にモテまくっている。
あいつが女の子にチヤホヤされてるのは、なんだかちょっと不愉快だった。
ただ、ゼンゼンは見上げるような大男だし、
一緒に居る時は、俺とずーーーっと喋っているので、
直接、告られたりすることは無かったみたい。
それに女の子達は、ゼンゼンより俺の方が話しかけやすかったようで、
何となくゼンゼンの事を聞いてくる娘は結構いた。
大抵は軽くあしらっていたけど、
ゼンゼンが好きそうなタイプの娘(調査済み)は、
「あの人、彼女居るよー」、って言ってあげた。
亜熱帯の台湾は、害虫が多くて結構大変だ。
「ね、あんたたちさー、最近、しょっちゅう一緒に居んじゃん。」
GoGoボーイのマイクは、俺の尻をキツく握る。
「うん。多分、お互い、好き、、だとは思う。」
「でも、ゼンちゃんって、あれ、ノンケでしょ?
(SEX)したりとはしてないの?」
「何だよ、いきなりすげー、突っ込んでくんじゃん。
でも、正直、今んとこ、、、無い、、よ?」
「キスも?」
「、、うん、、。」
「あーーもぉーっ、焦ったい。さっさとやっちゃいなさいよ。
あんたがまごまごしてんだったらさー、俺が先に告っちゃうよ?」
「死んでもオメーにはやんねーよ」
友達から恋人になるのは、案外あっという間だった。
いつの間にか、午前の授業が無い時には、
お互いの家で寝泊まりするようになっていた。
いつものように、テレビを見て、
深夜までくだらない話をして、いつの間にか寝落ちしていた。
「あっ、ゴメン。寝ちゃってた、、、。」
気がつくと、ゼンゼンは腕枕をして俺の顔を見つめていた。
「ね、、なんでだろう。
他の人が見たら、気持ち悪いと思うかもしんないけど、
ツーが側にいてくれると、すごい楽しいし、嬉しいんだ。。」
「他の人なんて関係ないじゃん。俺もゼンと居るとすごい楽しい、、」
この日、俺たちは初めて唇を重ねた。
結局の所、ゼンが俺の部屋に転がり込む感じで、二人の共同生活が始まった。
学業に追われる毎日で、
日常のルーティーンは、あまり変化無かったけど、
キスをして手を繋いで眠るのは、日常になっていた。
ベッドの中で見つめあっていると、
いつもガーガー(猫の名前)は俺たちの間に入ってきて、不機嫌そうに尻尾を振る。
「どうも俺、嫌われちゃってるみたいだね。。。」
「ゼンに嫉妬してるだけだよ」
ガーガーの頭を撫で撫でして、鼻にキスをすると、
尻尾ブンブンはやめて、俺の胸に乗っかって、丸くなって寝てくれた。
中秋節(お月見)の頃だっただろうか、月の光が明るすぎて、
次にやる振り付けの事が頭の中でグルグルとめぐり、
何だか寝付けずに居た。
ゼンは、いつものように俺に手足を絡め抱きついて寝ている。
抱き枕じゃねーんだぞ。
しょうがない奴だな、、と思いながらも、温もりを感じていた。
「ね、ツー、ツー?起きてる?」
「あっ、うん、起きてる。。。なんか眠れなくてさ、、、」
月明かりの下、枕元で丸くなっていたガーガーのお尻を軽く叩くと、
ガーガーはフンと鼻を鳴らし、どこかに行ってくれた。
ごめんね、ガー、後でいっぱい可愛がってあげるからね。