Back story #02–3年前 刺刺

Back Story

でかっ、顔小さっ。
これが8等身ってやつ??ってのが、ゼンの第一印象だった。
いかにも体育会系の、誰がどう見たって爽やかな好青年だ。
うかつにもタンクトップなんか着ているもんだから、
隠しようもない太い腕と、胸筋の谷間が、目に入った。
普段はシュッとした感じだけど、話していると案外ひょうきんな顔を見せるんだ。
そういう、俺にしか見せない表情が、可愛い。

なんでだかよくわかんないけど、
すげー話が合って、ツボが同じっていうのかな?
掲載が始まったばかりの日本の鬼が出てくるマンガの話で、
泣いたり笑ったりもした。

後から聞いて知ったんだけど、ゼンゼンはバイトでモデルをやっていた。
だから当然、女の子にモテまくっている。
あいつが女の子にチヤホヤされてるのは、なんだかちょっと不愉快だった。

ただ、ゼンゼンは見上げるような大男だし、
一緒に居る時は、俺とずーーーっと喋っているので、
直接、告られたりすることは無かったみたい。

それに女の子達は、ゼンゼンより俺の方が話しかけやすかったようで、
何となくゼンゼンの事を聞いてくる娘は結構いた。
大抵は軽くあしらっていたけど、
ゼンゼンが好きそうなタイプの娘(調査済み)は、
「あの人、彼女居るよー」、って言ってあげた。
亜熱帯の台湾は、害虫が多くて結構大変だ。

「ね、あんたたちさー、最近、しょっちゅう一緒に居んじゃん。」
GoGoボーイのマイクは、俺の尻をキツく握る。
「うん。多分、お互い、好き、、だとは思う。」
「でも、ゼンちゃんって、あれ、ノンケでしょ?
(SEX)したりとはしてないの?」
「何だよ、いきなりすげー、突っ込んでくんじゃん。
でも、正直、今んとこ、、、無い、、よ?」
「キスも?」
「、、うん、、。」
「あーーもぉーっ、焦ったい。さっさとやっちゃいなさいよ。
あんたがまごまごしてんだったらさー、俺が先に告っちゃうよ?」
「死んでもオメーにはやんねーよ」

友達から恋人になるのは、案外あっという間だった。

いつの間にか、午前の授業が無い時には、
お互いの家で寝泊まりするようになっていた。

いつものように、テレビを見て、
深夜までくだらない話をして、いつの間にか寝落ちしていた。

「あっ、ゴメン。寝ちゃってた、、、。」
気がつくと、ゼンゼンは腕枕をして俺の顔を見つめていた。
「ね、、なんでだろう。
他の人が見たら、気持ち悪いと思うかもしんないけど、
ツーが側にいてくれると、すごい楽しいし、嬉しいんだ。。」

「他の人なんて関係ないじゃん。俺もゼンと居るとすごい楽しい、、」
この日、俺たちは初めて唇を重ねた。

結局の所、ゼンが俺の部屋に転がり込む感じで、二人の共同生活が始まった。
学業に追われる毎日で、
日常のルーティーンは、あまり変化無かったけど、
キスをして手を繋いで眠るのは、日常になっていた。

ベッドの中で見つめあっていると、
いつもガーガー(猫の名前)は俺たちの間に入ってきて、不機嫌そうに尻尾を振る。
「どうも俺、嫌われちゃってるみたいだね。。。」
「ゼンに嫉妬してるだけだよ」
ガーガーの頭を撫で撫でして、鼻にキスをすると、
尻尾ブンブンはやめて、俺の胸に乗っかって、丸くなって寝てくれた。

中秋節(お月見)の頃だっただろうか、月の光が明るすぎて、
次にやる振り付けの事が頭の中でグルグルとめぐり、
何だか寝付けずに居た。
ゼンは、いつものように俺に手足を絡め抱きついて寝ている。
抱き枕じゃねーんだぞ。
しょうがない奴だな、、と思いながらも、温もりを感じていた。

「ね、ツー、ツー?起きてる?」
「あっ、うん、起きてる。。。なんか眠れなくてさ、、、」

月明かりの下、枕元で丸くなっていたガーガーのお尻を軽く叩くと、
ガーガーはフンと鼻を鳴らし、どこかに行ってくれた。
ごめんね、ガー、後でいっぱい可愛がってあげるからね。

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